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99.エピローグ

 ひと月ほど経ち、すっかり動けるようになった天登あまとは、病床の母を訪ねた。


 母は相変わらず眠り続けていた。


 あかりは、最後に天登あまとに会ってから一ヶ月ほどしか経っていないはずだったが、天登あまとの印象が大きく変わったことを感じた。どこか大人びたというか、影のある印象を受けた。


 「あかり、今までありがとう。俺、やっと母さんを治す方法を見つけたよ」


 天登あまとは、これまでのことを一部始終話した。

 あかりは、激闘と仲間の死に直面したことが天登あまとの印象の変化につながったことを想い、涙ぐみながら、話を聞いた。


 「お母さん、1週間前、時折うなされてたんだ。天登あまとが戦っているときと重なるね。不思議だね」


 「あぁ、妖魔の王、龍虎りゅうこは、俺が病気の母を抱えていることをわかっていたようだ。だから薬の処方を教えてくれた。妖魔は、不思議な存在だよ」


 天登あまとはここに来る前、アクラと優天に龍虎りゅうこから教えてもらった処方を伝えた。

 2人は沈丁花じんちょうげにそのような効果があることは知らないようだったが、ちょうど冬季の今、沈丁花の根を掘り出し、薬を作ってくれた。


 天登あまとは、母親の背を支えて身体を起こした。

 沈丁花の根を煎じた湯を冷ましながら、少しずつ、飲ませていった。

 すぐに変化は出なかったが、そのあと、天登あまととあかりは、とりとめもない話をしながら、宵を過ごした。


 服用から4時間後、母の身体から蒸気が立ち上りはじめた。


 「こんな症状、みたことない」


 あかりは驚きの声を上げた。


 「大丈夫だ。身体は熱いけど、表情は穏やかだ」


 2人が見守る中、やがて蒸気は収まった。


 そして、母はゆっくりと、目を開けた。


 「あぁ〜、よく寝た! あら? どうしたの? 2人揃って? ん? 泣いてる?」


 感極まり、天登あまととあかりは、母に抱きついた。

 

 落ち着いた後、母が語ったところによると、長い夢を見ていたようだ。


 はっきりとは思い出せないようだが、強い力に抱き抱えられていて、その力の主と一緒に、いつも天登あまとを見守っているような内容だった。


 時に天登あまとの苦しみが伝わってくることがあったが、強い力の主が、その度に天登あまとを支えているように感じた。


 その時は、母を抱く力も増し、腕にあざができると思ったと、母は語った。


 天登あまととあかりは、顔を見合わせた。突如できた母のあざを良いものと表現したアクラの診断は、当たっていたのだ。


 また天登あまとは、龍虎りゅうこ戦の時感じた、父の声と力を二人に話した。


 「お父さん、ずっと、私たちを、見ててくれたんだね」


 涙ぐみながら、母が言った。


              ◇


 「はぁはぁ、なんでバレたんだ」


 深夜のオフィスビルを逃げ回る人影。その形相から、妖魔の血が濃い者とわかる。


 「逃げ回っても無駄だ」


 2人の破邪士が、影を追い詰める。


 「俺は龍虎りゅうこ様の側近だ! 俺に手を出すと、パテラが黙ってないぞ!」

 「龍虎りゅうことは話がついている。お前は執拗なパワハラにより部下を死に追いやった。立場が下の者にしか強く出られない、陰湿な妖魔だ。覚悟しろ」


 「ちくしょう!喰らえ!」


 妖魔は両腕をギリギリと巻いて、ドリルのような形状にし、鋭く打ち込んできた。

 破邪士達は攻撃を難なくかわし、1人がドリルを真ん中で断ち切った。


 「ぐあぁぁ!」


 すかさず、もう1人が背に負っていた大剣を抜き、心気を巡らせ妖魔に叩きつけると、一瞬で妖魔は粉々に砕け散った。


 「ふうぅ」


 「よし」


 2人は、天登あまとにしきだった。


 あれから、2年が経った。妖魔は組織的な動きは沈静化したように見えたが、龍虎りゅうこの影響下になかった妖魔の活動は、依然として続いていた。


 むしろ人間社会に深く浸透し、社会的地位を得ている妖魔は、保身を目的に残虐性を発揮し、パワハラやいじめなど、人間社会に暗い影を落としていた。


 ゴテンの破邪士団はそれら妖魔をリスト化し、討伐した。


 パテラや龍虎りゅうこをターゲットとするこれまでメインだった活動から、リスト妖魔の討伐へ、任務の重要度がシフトした。

 その結果、スリーマンセルもツーマンセルに緩和され、天登あまとは今回、にしきとチームを組んだのだった。


 天登あまとはあかりと同じ大学に進学したが、勉強しながらも破邪士を続けていた。


 母は全快し、なぜか病弱だった以前とは別人のように元気になった。


 天登あまとは当初破邪士になった目的は達したが、依然として妖魔の脅威にさらされている人間を救うため、活動を継続することに決めたのだ。


 小雪も、慶次けいじも、仲間は皆そうだった。


 翌日は、ゴテン攻防戦から丸2年経った日だった。


 あの戦いに参加したメンバーは、天守を筆頭に、命日である伍代の墓前にいた。


 祈りを捧げ終わったあと、全員が隣の墓に向き合った。


 それは、瑠川るかわの墓だった。


 瑠川るかわ迅鬼じんきとの戦いで滅心術を使い、すさまじいパワーを発揮したが、その代償として寿命を差し出していた。


 そして半年前、その寿命が尽きたのだ。


 皆は泣き崩れたが、晴れやかな表情で逝った瑠川るかわには、一片の悔いもないようだった。


 皆は墓前をあとにした。


 最後尾にいた天登あまとは、ふと空を見上げた。


 今も、この空の下で破邪士達は、妖魔との戦いを繰り広げている。


 伍代や瑠川るかわ、これまでも、妖魔との戦いで無念にも散った仲間達や、犠牲になった人間の想いを胸に。


 そのとき、天登あまとのスマホが鳴った。


 ディスプレイには、「龍虎りゅうこ」と出ていた。     



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