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95.応酬

 「もう、もうちょっと……」


 天登あまとは、センサー網が少しずつ龍虎りゅうこの攻撃パターンを捉え始めたことを感じた。

 僅かだが、受け身を取れるようになってきた。


 「ほぅ。なかなかの戦闘センスだ。この短い間にコツをつかみつつある。だが!」


 龍虎りゅうこは攻撃パターンを変速させてきた。再びクリーンヒットが始まる!


 「こちらが変化を加えれば済むことだ! あきらめろ!」


 天登あまとはダメージの蓄積に、ともすれば意識が飛びそうな感覚をもった。

 自分が今何をしているのか、ふと苦痛から忘れそうになる。

 心が現実逃避しようとしているのか、龍虎りゅうこの攻撃を直視させないようにしているように感じた。


 その時手元の獅子王丸が天登あまとの視界に入った。


 (そうだ。俺は、伍代さんに獅子王丸を託されたんだ。ぼぉっとしているわけにはいかない!)


 必死で正気を取り戻した時、センサー網が研ぎ澄まされた感度に達していることを感じた。

 これなら、龍虎りゅうこの攻撃が読める!


 「とどめだ!」


 龍虎りゅうこ天登あまとの顎をめがけて膝蹴りを入れてきた!

 しかし天登あまとは間一髪で、これをかわした!

 龍虎りゅうこの膝は大きく空を切った!

 天登あまとは獅子王丸を振り抜き、龍虎りゅうこの胴を打った!


 体勢をうまくとれず、また痺れが残った握力のため打撃は浅かったが、龍虎りゅうこに対する心理的ダメージは十分だったようだ。


 「そんなはずはない!」


 龍虎りゅうこはよりスピードを上げた連続高速攻撃を加えてきた!

 しかし、心気のセンサー網で捉えた龍虎りゅうこの動きは、手に取るように感じられた。

 天登あまと目を閉じて、攻撃をかわし続けた!


 「あいつ、眠りながらよけてんのか?!」


 慶次けいじが叫ぶ!


 「コツをつかんだのね。より集中するために、目を瞑ったのよ!」


 瑠川るかわが解説した。


 天登あまとは、手の痺れが解けてきた。


 (よし、しっかり剣を握れるようになった!)


 再び、天登あまとの心気色、輝く青が戻ってきた!

 天登あまとは開眼した!


 「青天の太刀、円火えんか!」


 天登あまとは獅子王丸を水平に高速で振り抜いた!

 青の残像が鮮やかに残る!

 龍虎りゅうこは左腕を硬化して受けたが、斬撃が肉を切り裂き、血が飛び散った!


 天登あまとが初めて龍虎りゅうこに与えたダメージだった。

 龍虎りゅうこは妖気を集中し、たちまち止血した。


 「ならばこれでどうだ? 妖拳隔撃!」


 龍虎りゅうこは、リーチ外から打撃を出したにもかかわらず、天登あまとの目の前で現出する拳「妖拳隔撃」を放った!


 天登あまとは驚き、顔面にまともに受けた!


 「妖拳隔撃は、時空を超えて敵の目の前へ攻撃を送る技だ。いくら心気の網を張っても感知できないだろう」


 しかし天登あまとは見逃さなかった!


 龍虎りゅうこのモーションと打撃には、ほんの一瞬だが間がある。

 天登あまとはその間を利用しながらなんとか急所を外した。

 そして、獅子王丸に心気を注いだ!


 「これまで以上に、獅子王丸に集まる心気が膨らんでいる!」


 樹々《じゅじゅ》が叫んだ。


 一方で龍虎りゅうこは右手で妖拳隔撃を放ちながら、左手を極大まで硬化させた。


 左手はするすると伸び、さらに鋭く研ぎ澄まされていき、手につながる剣になった。

 この世のものとは思えない量の緑の妖気が集中している。

 触れるだけで身が溶けるのではないかと感じられた。


 「互いに、次で決める気だ。皆、衝撃に備えるんだ」


 にしきが注意を促した。

 

 龍虎りゅうこは妖拳隔撃を停止し、右手を左手に添え、さらに妖気を注ぎ込む。


 「俺にここまでさせた破邪士は、今までいなかった。あの世で誇れ」


 「俺は負けない。この戦いを終わらせるだけだ!」


 「おまえの死でしか、決着はみないのだ」


 「試してみろ!」


 「望み通りにしてやろう! 妖王ようおう烈獄斬れつごくざん!」


 龍虎りゅうこの剣の輝きが最高潮に達した!


 天登あまとへ突進する龍虎りゅうこの背後からは、巨大な緑の光球がまるで恒星のように迫り来る!


 天登あまとは、それでも自ら龍虎りゅうこへ突進する!


 「青天の太刀、奥義、大海たいかい壮壁!」


 荒れ狂う大海たいかいのように、獅子王丸が大波を起こした!

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