94.無尽蔵の心気
「なるほどな。伍代政輝が託すだけのことはある」
「……」
「しかも、それほどの心気を全力で放出させているにも関わらず、一向に衰えない。俺も長く生きたが、お前のような破邪士は見たことがない」
「降参するのか?」
「まさか。この龍虎が降参するときは、死ぬときしかない。それは、このフルパワーでお前を倒せなかった時だ!」
龍虎がフードを外した。緑色の髪がさらさらとこぼれる。
「俺のフルパワーは、大地や森を傷つける。できれば使いたくないが、そうも言っておれん」
龍虎の両手から稲妻のような妖気が迸り始めた!
威圧感はこれまでの数十倍に膨れ上がった。
「皆、俺の後ろへ」
錦が傷ついた仲間を下がらせる。
天登も驚きを隠せない。
「こんなパワーを持つ生物が、地球に存在できるのか……」
龍虎は妖気を集めに集めた両手を伸ばし、両手指を交差させた。
すると稲妻は龍虎の全身を走り、一瞬あたりは静まった。
しかし次の瞬間、龍虎の身体から無数の稲妻がほとばしった。
「いかん! 錦!」
「あぁ!」
呼びかける瑠川に呼応し、錦は瑠川とともに心気のベールを作り、仲間を保護した。
天登も心力を発揮し、稲妻に耐えるが、目も開けていられない。
「いくぞ!」
龍虎の姿が消えた。と思った瞬間、天登の腹部に強烈なエルボーが入った!
防御姿勢が追いつかない。
再び姿を消した龍虎は次に右足で天登のこめかみに強烈な蹴りを入れた!
吹っ飛ぶ天登を瞬間移動のように追いかけ、さらに上から膝蹴りを入れ、地面に叩きつけた!
天登はすぐに立ち上がり、大きく距離を取った。
「はぁはぁ、全く動きが見えない……」
「おまえは心気で戦闘力を強化したようだが、動体視力まで高まった訳ではなかろう。俺は消えてなどいない。動いただけだ。伍代政輝なら、かろうじて見えていただろうがな」
天登は、武具により即席でパワーだけが向上した自分のアンバランスさを思った。
基礎能力は変わらず、出力だけ数十倍に増えた状況。
龍虎の言う通り、俺は自分の溢れる心力を使いこなせていない。
心力しか上がっていない、心力しか……。だったら……。
「何の真似だ?」
天登は目を閉じ、両手を広げた。
心気の網を広げるイメージだ。
心気しかないなら、心気でセンサー網を作り、龍虎の動きを「感じる」しかない!
「天登がやろうとしていることはわかるけど、心気の乱れを感じることもまた、訓練を必要とする。うまくいくかしら……」
瑠川が不安そうにつぶやいた。
龍虎が再び攻撃を再開した。
瑠川の不安は的中し、先ほどと変わらずクリーンヒットが連発される!
極大量の心気で全身を覆い続けている天登にも、さすがにダメージが蓄積している。
「まずい。心気が落ち始めた」
錦は絶え間ない龍虎の攻撃が、天登が獅子王丸に供給する心気量に影響を及ぼし始めたことに気づいた。
「あんな攻撃を心気なしで受けると、一発で身体は粉々になる。やばい状況だ……」
天登も、よくわかっていた。
獅子王丸を握る力が弱まると、心気の出力は減る。
度重なる攻撃に、手の痺れが取れにくくなっている。
握りにくい。心気を送りにくい。




