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89.限界

 「そんな大事な理由を俺にペラペラ話してもいいのか?」


 「構わん。妖魔が破邪の天守を狙うのは、ごく自然なことだ。理由など、取るに足らんことだ」


 「なぜ話した?」


 「俺が生半可な動機でここに来た訳ではないことを、この場の将であるお前にわからせるためだ。覚悟しろ」


 「わざわざご忠告ありがとよ。こちとら、最初から本気だぜ」


 伍代は剣を抜いた。


 「ほぅ、獅子王丸ではないか」


 「よく知っているな。この太刀には、あやかし食いと呼ばれる異名もある」


 「そうらしい。少しは楽しめそうだ」


 伍代は左手の親指を刃に添え、血を含ませた。

 すると獅子王丸の刀身は赤黒く輝き出した。


 「俺も妖魔の血は2割ほどある。太刀が喜んでらぁ」


 「ほぅ。2血でよく、俺を前にして、人の心を保っていられるな」


 「まぁ苦労したぜ。だがそのおかけで、破邪士として卓越した力を手に入れた。その一つを今からお見舞いする。獅子王丸、邪神の太刀!」


 赤黒く輝く太刀からオーラが空高く立ち上った。


 「邪神の太刀、円髄えんずい!」


 横一閃に目にも止まらぬ高速で振られた太刀筋を、龍虎りゅうこは跳んでかわした。


 「昇刃しょうは!」


 返す刀で上空の龍虎りゅうこを狙う!

 しかし龍虎りゅうこは太刀筋を見極め、足を大きく上げて紙一重でかわした。

 そのまま宙返りし、地面に着地する。元いた場所からほとんど動いていない。


 「邪神の太刀、達磨だるま落とし!」


 左手で心気の塊を龍虎りゅうこの上空に作り出し、一気に落とすのと同時に、伍代は右手の大刀を逆手に持って横一閃に振り抜いた!

 龍虎りゅうこは右手の人差し指で心気塊を、左手の二本指で太刀を挟み、難なく伍代の攻撃を止めた。


 「そんなものか?」


 渾身の力を込めても、太刀はピクリとも動かない。


 「こちらからいくぞ!」


 龍虎りゅうこは一瞬姿を消した。

 伍代が見失った時、

 「こっちだ」

 背後からの声に振り返ると、腹部に強烈なパンチがめり込んだ。

 

 龍虎りゅうこに左手で肩を押さえられており、衝撃で飛ばされることはなかったが、その分全てのダメージを腹部で受けることになった。

 伍代は胃液を吐きながら、なんとか堪えたが、再び龍虎りゅうこが消えた。


 伍代は目で追えない事を確信し、全身に赤い心気を分厚く纏った。獅子王丸を構え、反撃に備える。


 「こちらだ」


 直上に浮かんで現れた龍虎りゅうこは、サッカーボール大の妖気弾を放った!

 恐ろしい量のエネルギーが凝縮されているのがわかる。

 伍代は頭上に両手をクロスして防御姿勢をとった!

 妖気弾が接触したが、爆発しない。爆発せず、大きさからは想像もできない重圧が両腕にのしかかってくる!

 伍代が踏ん張っている地面がみるみるめり込んでいく! 伍代の全身の骨が軋む!


 「うおおおおおおおお!」


 限界を迎えた時、上空にいた龍虎りゅうこが、てのひらを握った。

 するとその瞬間、妖気弾はクラスター爆弾のように弾け飛んだ。伍代の身体中に無数の尖った妖気塊が突き刺さる!


 「うおおおおお! 最大心力!」


 叫び声を上げながら身体を覆う心気を最大限に膨らませ身を守るが、龍虎りゅうこの妖気は容赦なくそれを突き破ってくる!


 「おおおおおおお!」


 クラスターの雨をなんとか耐え切った伍代だったが、満身創痍になっていた。


 このとき、龍虎りゅうこ史竜しりゅうの負傷を認め、助けに入った。


 「伍代さん!」


 東門の戦闘が終結し、瑠川るかわにしき、樹々《じゅじゅ》、五右衛門ごえもんが駆けつけた。

 天登あまとは他多数の妖魔をあらかた無力化していた。


 龍虎りゅうこは伍代への攻撃を再開した。



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