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82.強さへの執着

 後に残った酒呑童子は、不思議なものを見る目で、今にも死にそうな真宗を見下ろしていた。


 「おまえ、死ぬのか?」


 「そうだな……」


 「死にたくないのか?」


 「どっちでもいいかな」


 「生かしてやろうか?」


 「どうやって?」


 「こうだ」


 酒呑童子は、自らの指を一本引きちぎり、ほとばしる血を真宗の傷口に落とし始めた。


 「なんだこれは。何をしてるんだ?」


 「お前を妖魔にしてやる」


 「何? やめろ! やめるんだ!」


 「お前の指図は受けない。俺がやりたいからやるんだ」


 真宗の身体は熱くなり、多量の蒸気を発し始めた。

 彼はそのまま気を失った。


 彼が目覚めたのは、森の中だった。


 傍にはタバコを蒸す少年を中心に、数人の妖魔がいた。


 少年は、龍虎《りゅうこ》だった。


 「おはよう、真宗」


 龍虎《りゅうこ》が話しかけた。


 「気分はどうだ?」


 「あ、あぁ」


 真宗には、龍虎《りゅうこ》の言葉がひどく心地よいものに感じられた。どうやら傷は完治しているようだ。


 「お前はもう、妖魔になった。これからは、どこまでも強くなれる」


 「そうなのか?」


 「妖魔は人間のように肉体の限界がないし、5倍以上も生きる。力を伸ばせるかどうかは、お前次第だ」


 そう言い残すと、龍虎《りゅうこ》は去った。

 取り巻きの妖魔の1人は、酒呑童子だった。


 彼が最後に残り、真宗にかけた言葉は、「破邪士を食え。無限に強くなれる」だった。


 「そうして、お前は、破邪士を食い続けたのか」


 錦《にしき》は、歯噛みする想いだった。


 自分を助けて死んだと思っていた真宗が、破邪士の天敵となって活動してきたというのだ。


 「そうだ。これという強さを持った破邪士は食った。すると信じられないぐらいパワーアップするんだ。妖魔の強さには天井がない」


 「お前が破邪士を喰らい、龍虎《りゅうこ》の手先としてゴテン攻撃に加わり、今ここにいることは、完全に俺の責任だ」


 「そんなことはどうでもいい。俺は強くなった。あの頃は同じぐらいの強さだった錦《にしき》、お前が、そのまま人間として、破邪士として腕を磨いた結果、俺とどちらが強くなったのか、俺はそれだけに興味がある」


 「どうしようもない奴になったんだな、真宗。ひどく責任を感じるぜ。望み通り、試してやる」


 2人は大刀を振りかざし、高速で何合と刀を合わせた。


 錦《にしき》はなんとなく違和感を感じ、距離を取った。


 「お前、それは妖気なのか?」


 「よく気づいたな。これは妖心気という。これを扱えるのは、史上俺だけだそうだ」


 「どっちつかずの半端者め」


 「そうでもないぞ。元来、心気と違って妖気は武器へ伝えにくい。妖心気はそれが容易だ。証拠にほれ」


 鋭い軋《きし》み音とともに、錦《にしき》の大刀にヒビが入った。


 しかし、錦《にしき》は落ち着いている。


 「お前もよく見ろ」


 真宗が自分の大刀を注視し、手の甲で叩いてみた。すると、刀は音を立ててバラバラと崩れた。


 「雨神楽《あめかぐら》錦《にしき》、それでこそ俺の好敵手《ライバル》」


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