龍虎襲来
天登達が去ってしばらく後、またもや天守の部屋のドアがノックされた。というより、激しくドアをたたいている。
「どうしたの? 入りなさい」
天守の声で入ってきたのは、五右衛門と網川樹々《じゅじゅ》、それに樹々《じゅじゅ》の師である安藤千夏だった。
千夏以外は、傷だらけだ。
「どうしたの千夏!」
天守が立ち上がって訊いた。
「はい、函館に、龍虎が現れました! パテラ幹部を引き連れて、街を攻撃しています! 付近で活動中だった五右衛門、樹々《じゅじゅ》のチームが応戦しましたが敗れ、なんとかゴテンへ帰りつきました」
「信理は? チームに海堂信理がいたわね? 彼は?」
「それが……。大きな傷を負い、医務室で手当を受けています。アクラと、見ない顔ですが翼の妖魔が、今必死で治療していますが……」
「難しいのね! わかった、私が行きます!」
天守は医務室へ向かうべく、部屋を飛び出した。
医務室の前には、信理の父、天登、小雪が長椅子で頭を抱えていた。
部屋に飛び込んだ天守達の目に飛び込んだのは、手足がちぎれ、息絶え絶えの信理の姿だった。
最新の医療設備に医師が3人、さらにアクラが懸命に手足の繋ぎ止めにかかっており、生命維持には優天が翼からオーラを送っている。
「どうなの?!」
天守の問いに、アクラが泣きそうになりながら答えた。
「厳しいです。身体の奥の心気が弱まっていくのが、止まりません……」
「わかったわ。すぐ戻ってくるから、続けて。沙夜、スピーカー用意」
天守は手術室を後にし、隣室に入った。
そこに用意されたスピーカーを手に取る。沙夜がスマホで画像も送る準備をした。
「ゴテンに滞在中の全破邪士、及び全国で活動中の破邪士に告ぐ!」
天守が呼びかけた。
「破邪士、海堂信理が命に関わる重症を負った。医療スタッフでは支えきれない。このため、私が治療する」
天登は、信理の病室前で天守の言葉を聞いていたが、なぜ天守が治療することを皆に宣言する必要があるのか、訝しんだ。
天守は続けた。
「従って、その間、結界は消える! 皆に奮起を求めたい!」
その時、大きな物音とともに、伍代政輝が入ってきた。
「天守!」
「伍代さん」
「天守! わかっていると思うが、函館を龍虎が攻撃している。ここの目と鼻の先だ!」
「えぇ」
「奴らは、結界が解けたこのゴテンへ、必ず総攻撃を仕掛けてくる!」
「えぇ」
「下手すりゃ、ゴテンは陥され、破邪士は全滅だ! そうなりゃ人間社会から妖魔社会への転覆に、まっしぐらだ!」
「えぇ、わかっています」
天守は真っ直ぐに五代を見つめ、答えた。
その様子は沙夜のスマホから、全国各地に散らばる全破邪士へ中継されている。
「一破邪士の命が、人間社会全体の価値に匹敵すると……?」
「天秤で計るのではありません。瀕死の破邪士の命を救わずに、人の社会を守れますか? 皆さんがこれからも、命を賭して使命を全うできますか? 破邪士団は、一体のチームです。一人の危機は全員の危機。結束こそが、私たち破邪士団の、妖魔に勝る唯一の点だと、私は信じています」
「天守……」
「伍代さん、お願いします」
天守は伍代に深々と頭を下げた。




