64.妖魔とは
「お前、怪我してるじゃねぇか。大丈夫か?」
「いや、大丈夫だと思うんだけど……」
「全然大丈夫そうじゃねぇぞ、誰にやられたんだ?」
「破邪士って言ってた。妖魔のお前を倒すって言われた」
「何? 破邪士? おまえはそいつに何かしたのか?」
「何も……。突然斬りつけられたんだ」
「ひでぇじゃねぇか!」
「妖魔って言われた……。妖魔って何だろう?」
「なんでもねぇよ。ただの個性だ。よし、俺がそいつをやっつけてやる! おまえ、名前は?」
「アキラ」
「そうか、アキラ。俺はトオルだ。おまえは今日から、俺の仲間だ!」
アキラは薄れゆく意識の中で、トオルとの出会いを思い出していた。
そうだ。あの時は、俺たちは自分が妖魔か人間かなんて、こだわっていなかった。
だから、最初はチームにも人間がいた。
人間の仲間だって、トオルは分け隔てなくつるんで、一緒にバイクで走った。
でも、高校ぐらいから、なんとなく妖魔だけになって……、集会に繁妖会から大人が来るようになって……、そして、人間への憎悪が強くなり、攻撃をするようになって……。
「トオルさん、チームを作り始めた時が、一番楽しかったよなあ」
「そうだな、アキラ」
「あの頃は、妖魔も人間もなかった。ただ気の合う仲間がいただけだった」
「いつのまにか、息苦しくなっちまってたな。頭やってた、俺のせいだよ」
「妖魔と人間が殺し合うからだよ」
「でもおまえ、それはしょうがないだろう?」
「トオルさん、あの天登って破邪士は、僕らのために泣いてくれたよ?」
「……」
「だから、トオルさんも、彼とは戦わなかったんでしょ? 彼なら、僕らの気持ちがわかってくれると思ったんだよね?」
「……」
「俺、人間から社会を取り戻すとか、全然意味がわからなかったんだ。『パテラ』よりも、みんなと一緒につるんでる時間の方が、よっぽど大事だった」
「アキラ……」
「トオルさん、俺たち、たくさん人間を殺したから、絶対地獄行きだけど、地獄でもチームやろうよ。仲間を作ろう」
「そうだな……、アキラ。人間でも、妖魔でも、関係なく、気の合う仲間で、チームを作ろう」
「うん、作ろう!」
天登は、破邪士本部のゴテンの旅館で目覚めた。
長い夢を見ていた。
アキラと、トオルの会話……。
天登は、眠りながら、自分が泣いていたことを知った。
「そうだ! 慶次!」
天登は飛び起き、重症を負った慶次の病室へ走った。
ネームプレートを確認し、ノックすると、「はい!」と元気な声がした。
ドアを開けると、ベッドに上半身を起こした慶次が、牛丼をかっこんでいた。
「よお! 天登! 起きたか? 遅かったなあ!」
慶次は口をモゴモゴさせ咀嚼している。
「慶次、よかった! 無事だったんだ!」
「おぅよ! アクラに治療してもらって、もうピンピンしてるぜ!」
「アクラ、ありがとう!」
そばで点滴を確認していたアクラに、天登は礼を言った。
「慶次さんが、全身大火傷で大打撲なのに、命に別状がないなんて、人として異常な状態で運び込まれた時は驚きました。でも、もう大丈夫です」
「はは、俺異常だってよ!」
「でも、しばらくは安静が必要ですよ!」
「そうなの?」
「火傷や怪我より、戦いの最中、しかも重症を負っている中で、新しい心気の使い方をやりましたね?」
「あぁ、自分でも、一皮剥けたのがわかるぜ」
「それはいいのですが、身体が慣れるまでは、負担があります。重症時にやったことで、まだ身体にダメージが残っています。2週間は安静です」
「えぇーー! 2 週間も!」
「あ、ん、せ、いです!」
「はい……」
「はは、アクラ、慶次を頼むよ! 慶次、今はゆっくり休め!」
天登は元気な慶次を見て安心し、病室をあとにした。




