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63.居場所

 「トオルさん、なんで……」


 「アキラ、俺が欲しかったのは、強い駒なんだ。仲間じゃない」


 「トオルさん、それじゃあ、破邪士の方が……、人間の方が……、よほど……」


 アキラは倒れた。

 その瞬間、天登あまとを捕らえていた暗室呪縛は解けた。


 「ヤマキ! さっさとそいつにトドメをさせ!」


 トオルが怒鳴った。


 「お、おぅ!」


 ヤマキが力を込めようとした瞬間、景色がひっくり返るのを感じた。

 そして自分の首が地面に達する時、天登あまとのジャマダハルに滴る血が、自分のものだと認識し、絶命した。


 天登あまとは、気を失い、倒れかけた慶次けいじを受け止め、地面に寝かせた。


 そしてゆっくりとトオルの方へ、歩を進めた。


 天登あまと、トオルに尋ねた。


 「おまえ、アキラの言葉は聞こえてなかったのか?」


 「聞いたが、なんだ?」


 「仲間と言ってたろう?」


 「そうだな。幻想だ」


 「仲間じゃなかったのか?」


 「駒だ」


 「アキラは信じてたぞ」


 「バカなやつだ」


 天登あまとは、トオルの目の前まで来た。


 「バカはおまえだ!」


 怒りに打ち震える天登あまとから、心気がほとばしり始めた。父のペンダントは強い輝きを放っている。


 「仲間の言葉に、耳を傾けろ!」


 天登あまとは全身を心気で包み、まるで青い球体のようになってトオルへ突進した。


 トオルは、咄嗟に、瀕死の仲間を呼び寄せた。

 しかし天登あまとは、心気弾を連写してトオルの両手を弾いた。トオルの手から仲間が離れた。

 天登あまとはそのまま突進し、心気で真っ青に輝くジャマダハルを、トオルの腹に突き立てた。

 硬化していたはずのトオルの肉は容易に裂かれ、腹に風穴が空いた。ほとんど手応えがなかった。


 「グフっ!」


 トオルが吐血した。


 「そうだな……。バカは……、俺だ」


 天登あまとがジャマダハルを抜くと、トオルはそのまま前のめりに倒れた。同時に、ジャマダハルに、音を立てて何本もヒビが入った。


 トオルは、アキラのそばに倒れた。


 「アキラ……。俺は、間違ってたのか……? 妖魔の理想郷は、まだ遠いのか? このやりかたじゃないのか? 教えてくれ、アキラ……」


 アキラに答えをもとめながら、トオルは、絶命した。


 天登あまとは、アキラのそばにしゃがみ込んだ。まだ息がある。


 「アキラ……」


 「トオルさんは、死んだんだな……」


 「あぁ、最後に、おまえに答えを求めていた……。そして、トオルは最後に、間違いなく硬化を解いていた」


 「そうか……。トオルさんの疑問の答えは、俺にも、わからない。でも、俺がトオルさんと出会ったとき、あの人は、間違いなく、仲間を信じていたんだ。俺はそんなトオルさんが、カッコいいと思った。だから、狗縷巣くるすに入ったんだ。ここが俺の居場所だって、心底思えたんだ……。ぐはっ!」


 アキラがもう長くないのは、誰の目にも明らかだった。


 「なぁ、あんた、天登あまとって言ったか? なんで破邪士は、妖魔を殺すんだ? 俺は、妖魔でも何でも、仲間と楽しくやれたら、それでよかったんだ。トオルさんや、ヤマキや、みんなと、つるんでるだけで楽しかったんだ。なんで、妖魔と人間は、殺し合わないといけないんだ……?俺は……」


 涙を流しながら、アキラは逝った。


 天登あまとも、止めどなく溢れてくる涙を抑えることができなかった。


 一陣の風が、蒸発していくトオルとアキラの亡骸を、一緒に、空へ舞い上げた。


 まるで、2人で楽しそうにふざけ合っているように見えた。

 


 


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