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61.アキラ

 「お前たちに、仲間意識があるのか……?」


 「こんな人間臭い感情は、本来は妖魔に希薄だろう。ない妖魔が大半だろうな。だが、俺たちにはあった。俺は8血だから、これは2割の人間の血かもしれない」


 「君は、人間を憎んでいない……?」


 「組織として、パテラの命で、人間を攻撃目標と認識はしている。大半の妖魔は、それに疑問も持ってないだろう」


 「君は違う……?」


 「さぁね。ただ、君が僕の仲間たちを、たくさん傷つけたことは変わらない。その点で、僕は君へ、攻撃本能を向けることができる」


 アキラの右手に黒い風が巻き集まってくる。


 「暗室呪縛!」

 黒い塊が天登《あまと》を直撃した。


 「ぐあ!」

 天登《あまと》は金縛りにあったように動けなくなった。

 アキラの暗室呪縛は徐々に広がり、大きな立方体へと成長した。中に天登《あまと》が閉じ込められる。


 「暗室呪縛は、本来は仲間を守るための結界だ。外からの攻撃は届かず、僕が結界を解くまで中からも出られない」


 「ここから俺を出せ!」


 「中は暑くもなく寒くもなく快適だろ? そこから見てるといい。仲間がやられていくところを。僕の気持ちを、味わえばいい」


 アキラは、ヤマキと戦っている慶次《けいじ》の方を向いた。


 「ヤマキ! 遠隔攻撃で加勢する!」


 「ありがてぇアキラ! こいつなかなかだ!」


 アキラが妖気弾を放つ。

 さっきのマサシが放った妖気弾とは、スピードも威力も段違いだ。

 慶次《けいじ》はかわしながら、ヤマキの連打にも耐える。

 ヤマキだけだと慶次《けいじ》に分があったが、アキラの加勢があればたまらない。


 天登《あまと》は暗室呪縛の中から、大声を発し続けている。しかし、慶次《けいじ》には一切届かない。


 「何をしても無駄だよ。僕の暗室呪縛は、中の者を完全に外界から遮断する。物質世界の概念を超越した空間だ。音という物理現象も生じない」


 天登《あまと》は、追い詰められていく慶次《けいじ》を、ただ見ているしかなかった。


 錦《にしき》は、慶次《けいじ》のピンチに気づいた。

 すぐに駆けつけようとした時、鋭い蹴りが飛んできた。全身を鋼鉄のように硬化したトオルだ。


 「どこ見てるんです? 錦《にしき》さん。あんたの相手は俺ですよ?」


 「……。急用ができた……。さっさとやろうか」


 錦《にしき》は大剣を握り直した。


 「はっ!」


 一瞬で鋭い心気が大剣に行き渡る。


 「ほぉ、楽しめそうだ」


 錦《にしき》は地を蹴った。圧倒的なスピードでトオルの間合いに入った。

 錦《にしき》は背丈ほどもある大剣を軽々と片手で振るい、目にも留まらぬ斬撃を浴びせる。

 それをトオルは硬化させた両拳で全て受け止める。


 「ああぁ!」


 錦《にしき》の渾身の一振りを、トオルは両腕を十字にして受けた。

 トオルは衝撃で20メートルは地を滑ったが、ダメージを受けている様子はない。

 対する錦《にしき》も、息はまったく乱れていない。肩に大剣をかけ、トントンと思案する風をしてから、錦《にしき》の目つきが変わった。

 大剣がみるみる漆黒に変わっていく。凝縮した心気が剣の芯へ集中するあまり、剣の色素を奪っていったのだった。

 やがて剣の色が完全に黒に染め上げられた。


 「秘剣、八咫烏《やたがらす》」

 

 錦《にしき》は風のようにトオルとの距離を半分ほど縮め、漆黒の大剣を横一文字に振るった!

 あまりに間合いから外れていたためトオルは防御していなかったが、錦《にしき》が剣を振るった瞬間、トオルの胸が横一文字に切られ、血が吹き出した!

 トオルは膝をついた。


 「なぜだ……、間合いが詰まっていないのに!」


 「聞く耳は持たん」


 続けて錦《にしき》は激しく剣を振るった!振いながら、徐々に距離を詰めていく。


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