59.超特大心気弾
残った妖魔達がざわめき始めた。
「おぃ、隊長達、やられちゃったぜ!」
「こいつら、マジやばくねぇか!?」
「俺たちがどんなに束になっても、叶うはずねぇんじゃ……」
その時、丘の上から大声が聞こえた!
「お前らぁ!」
全員が一斉に振り返る。
「うろたえてんじゃねぇよ。俺がいるんだからよ!」
トオルの声に、残り200人余りの妖魔達の弱気が、目に見えて変わっていく。
「そうだよな! トオルさんがいれば、俺たちは負けねぇよ!」
「それより、隊長の席が6つも空いたんだ! 上へ行くチャンスだ!」
「そうだ! 俺はトオルさんに認めてもらうぜ!」
目の色が変わった妖魔達が、再び慶次と天登へ向き直る。
その時、トオルが大きく口を開け、声にならない声を発した。
天登は、一瞬キンとした超音波が走ったように感じただけだったが、妖魔達の様子がおかしい。
「なんだ? あの大将何をしやがった? 妖魔達の目が座ってやがる」
慶次は警戒を強める。
「血を利用した催眠だ」
いつの間にか錦がとなりに来ていた。
「妖魔の血にはたらきかけ、全員を一瞬でバーサーカー状態に引き入れた。個々の戦闘力は、数倍に跳ね上がる」
「やばいすね、気合い入れないと」
慶次は振り返った。
「天登、どうだ?」
「あぁ、できた!」
天登は半径50センチメートルほどの青い球体を右手に乗せている。
ただ膨らませたのではなく、極限まで凝縮させたため、心気の色は白から真っ青に変わっている。
さらに天登は、父のペンダントが輝いていることに気づいた。まるで、天登の極限まで高めた心気に反応しているかのようだ。
「慶次、よくしのいだ。天登、俺と慶次でタイミングを作る」
錦の指示だ。
「はい!」
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃあああ!」
妖魔達は一斉に天登達3人に向かって突進をはじめた。全員、白目を剥き、よだれがほとばしっている。
慶次が心気を身体にまとい、応戦しはじめた。錦は剣は抜かず、体術で対応している。天登を中心に、円周にいる2人が妖魔の攻勢を支えている。
「慶次、徐々に後退しろ。円を縮めるぞ」
「はい!」
やがて徐々に円は縮まり、3人がほぼ接触しそうな状態になった。
「天登、俺の肩に飛び乗れ!」
錦の意図をすぐさま理解した天登は、心気弾を抱えたまま、錦の両肩に飛び乗った。
「いくぞ慶次!」
錦は天登を肩に乗せたまま飛び上がり、慶次の肩をジャンプ台に、さらに高く跳躍した。
「天登、飛べ!」
天登は錦の肩から、さらに大きく飛び上がる。
「いけえええ!」
慶次の声が響き渡る。
「いくぞ!超特大心気弾!!」
天登が放った心気弾は、ゆっくり落下している錦を追い越し、一気に降下した。慶次は急いで距離をとった。




