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57.天登《あまと》の策

 一方、天登あまと慶次けいじは、襲いくる300体の妖魔と奮闘していた。


 「ちきしょうキリがねぇ!今何匹ぐらいやったか?」


 「2人合わせても100はいってないと思う!」


 「まだ1/3かぁ!」


 右から左から、上からも、素手だけでなくナイフや鉄パイプといった凶器で襲ってくる妖魔を、2人は懸命に倒していく。


 やがて背中を合わせた。

 「ハァハァ」

 「ハァハァ。慶次けいじ、相談がある」


 「なんだ? 何かいい考えか?」


 「俺が、超特大の心気弾を作る。今までで一番でかいやつ。多分、この空き地を吹っ飛ばせるぐらいのサイズにはできると思う」


 「すげぇ! やろうぜ、迷うこなねぇよ!」


 「あぁ、けどたぶん、3分はかかる」


 「うぇ!! 3分も?」


 「そう。その間、俺は心気を貯め続けるから、何もできない。戦えないんだ」


 「おっと、わかった。その間、お前を守って耐えろってこったな!」


 「そうなんだ。だから、相談だ」


 「だから迷うなって言っただろ? やってやろうじゃねぇか! 今から開始だ!」


 慶次けいじは、深呼吸し、力を集中し始めた。

 慶次けいじははこれまで心気を出さずに戦っていたように見えた。

 もちろん、身体機能は体内で心気を巡らし、自然と強化しているようだったが、少なくとも打撃には現れていない。

 そんな慶次けいじの全身を白い光が覆い始めた。

 天登あまととの修行で、慶次けいじも何かをつかみかかっているようだ。

 内なる心気を表出させ、拳に乗せ、敵に直接ぶつけるつもりだ。


 「よし、いくぜ!」


 天登あまと慶次けいじに負けずに、両(てのひら)に心気を集中しはじめた。

 完全無防備状態。

 好機とみた妖魔達が一斉に天登あまと目掛けて攻撃してくる。

 そこへ慶次けいじが素早く身体を入れ、心気をまとった拳を叩き込んでいく。攻撃力、スピードとも、格段にアップしている。


 「あれ、力貯めてる奴、やばいな。すげぇエネルギーを集中してやがる」


 戦況をみていた次期総長、マサシが、天登あまと慶次けいじの変化を認識した。


 「俺らも全力でいかないとやばいぜ」


 マサシを含め6体いる隊長クラスの妖魔が、一斉に攻撃に転じた。

 

 ある者は妖気で強化した鉄パイプを、ある者は両手の爪を太く固く発達させている。

 極め付けにマサシは、天登あまとの心気弾のように、妖気弾を作ろうとしている。

 あとの3体は肉弾戦担当のようで、真っ先に向かってくる。


 天登あまとの周囲3メートルの敵を蹴散らした慶次けいじは、3体の肉弾攻撃の隊長が迫ってくるのを感じた。


 「こいつらリストにいたな! 6〜7血。やっと中堅クラスが出てきたってことか。やってやるぜ!」


 3体が慶次けいじを囲み、殴りかかってきた。

 ケンイチは強い圧迫感を感じたが、それぞれの打撃はクリアに見えている。

 一撃一撃をかわしながら、確実に相手の急所に打撃を加え、ダメージを蓄積する。


 「何やっとんじゃお前ら!」


 3体の背後から躍り出てきた鉄パイプの妖魔が、力一杯凶器を振り下ろした。

 慶次けいじは跳んでかわしたが、パイプが叩きつけられた地面は半径3メートルほどの穴が出来てしまった。


 「すげぇパワー……。さすがにこいつはマトモにやらねぇと……」


 慶次けいじは腰を落とし、一瞬で腹に力を込め、「わっ!」と発声した。


 その声がパイプ妖魔に届くと同時に、慶次けいじの拳が相手の顔面にめりこんだ。


 「音速爆撃!」


 パイプ妖魔は音速で吹っ飛び、爪の妖魔を巻き込んで卒倒した。

 

 ポカンと口を開けて揃って見ていた3体の肉弾戦妖魔に、慶次けいじが背後から忍び寄り、左右の妖魔の頭部を掴んで、真ん中の妖魔の頭部をサンドイッチした。


 ゴチンという鈍い音が響き、3体が倒れた。


 「よし、あと一匹!」


 すると妖気弾を作っていたマサシが叫んだ。


 「ふはははは、いい時間稼ぎだった! でかい妖気弾が出来た! くらえ!」


 マサシは、慶次けいじではなく天登あまとを狙って、巨大な妖気弾を放った。


 「こっちじゃねぇのかよ! まずい!」


 完全に不意をつかれた慶次けいじは、疾風のように天登あまとのもとへ向かった!




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