55.狗縷巣(クルス)
「こいつら、警察じゃねえ!」
「じゃあ、破邪士ってやつじゃないのか?」
「俺初めて見た……。ほんもの」
「や、やべぇんじゃねぇの?」
「普通の弱そうな奴らじゃん?」
300体の妖魔達が口々に呟く。
「慶次、天登」
錦が口を開いた。
「お前らで300をやれるか?」
「マジで?」
慶次が驚く。
「あのお山の大将は、10血だ。側にいる奴らもハイクラス。俺が奴らをやる。雑魚は任せたい」
「!? 錦さんひとりでですか?」
天登は驚いた。
錦はトオルを指差した。
「あいつがこの集団の元凶だ。倒せば瓦解する」
「え、え、でも……。10血と8•9血が3体……。みんなでやんないとやばいですよ!」
慶次が錦に翻意を促す中、天登が口を挟んだ。
「しかし300の中にも、6〜7血が何匹かいますね。そいつらも相手にしながら幹部を叩くのは、流石にきつい……」
「そうだ。数もさることながら、そのレベルが10匹はいる」
「わかりました! そいつらまとめて、俺たちが引き受けます! そんですぐ加勢します!」
慶次が叫んだ。
「頼む。合図で動くぞ」
「はい!」
「1、2、3!」
錦、慶次、天登は、一斉に行動を開始した。
錦は一瞬で姿を消し、慶次は気合を入れて集団に突っ込む。
天登は両手に心気をためた。
「お前ら、かかれーー!!」
幹部のアキラが叫んだ。
「くそがーー!」
「殺す殺す殺す!!」
「死にやがれこらぁ!!」
妖魔達が一斉にこちらへ襲いかかる。
「いくぞ! 心気弾!!」
天登の両手から放たれた心気が弾丸のように左右前方の妖魔に向かって突っ込む。大爆発が起こるが、倒れた妖魔を踏みつけながら後から後から襲いかかってくる。
「まだまだぁ!」
天登は心気弾を連射した。
間断なく打ち続け、左右の妖魔を圧倒する。
中央では、数限りなく全方位から向かってくる妖魔を慶次が体術で圧倒している。敵は慶次の打撃一発で大きく吹っ飛ぶ。
「おらぁ! 雑魚に用はねぇんだ! 寝てろぉぉ!」
丘で戦況を見ていた斉次は、面倒なことになったと思った。
(ありゃ、売出し中の破邪士の雨神楽じゃねぇか。この人数で負けるこたねぇとは思うが、やり合いたくはねぇ)
「じゃ、俺帰るわ。トオル、あとはやっとけ」
立ち去ろうとする斉次に、戦況をみつめたまま視線を動かさずに、トオルが言った。
「斉次さん、見てったらいいのに。超面白くなるよ」
「へっ、俺だって忙しいんだ」
そそくさとその場を去る斉次にもはや関心を失ったトオルは、前方を見つめながら呟いた。
「破邪士って、食ったらすげぇ強くなれんだよなぁ。ラッキー……」
次の瞬間、トオルはふと違和感を感じ、戦況を見つめていた視線を、斉次が去っていった方へ向けた。
すると、いつのまにかそこには、破邪士、錦が立っていた。
右手には抜き身の大剣を握り、肩にかけ、左手には切り落としたばかりの斉次の首を、髪の毛を掴んで引っ提げている。
トオルは落ち着き、ゆっくりとそちらに正対した。
「破邪士さん、俺らの集会へようこそ」
錦は、斉次の首をトオルの方へ放った。
しかし、首がトオルの間合いに入った瞬間、ジュッという音と共に、首が蒸発した。
トオルは眉一つ動かさない。
「破邪士さん、俺、トオルっていいます」
「そうか。俺は雨神楽錦だ」
「錦さん、俺、あんたを食っていいすか?」
「俺に勝ったらな」
「じゃあ、いただきま‥」
トオルが言い終わらないうちに、アキラとヤマキが前に出てきた。
いつの間にか2体ともバイクに跨っている。
「トオルさん、こいつ食う前に、俺たちにやらせてください」
「痛めつけるだけなら、いいすよね?」
アクセルをふかしながら、2体ともやる気満々だ。
「あぁいいぜ、好きにしろ」
2体はアクセルを全開にした。




