54.妖魔の集会
百美台公園は、大手白物家電メーカーの工場跡地に整備された。
海外メーカーとの競争に敗れ、操業停止後に長期間放置され、建物は朽ち、草が生い茂るありさまだった。
この会社が海外企業に買収される際、不良資産の整理にあたって、市が土地を安く買取り、公園として整備をはじめた。
しかし広大な敷地の緑化や、遊歩道や遊具の設置に財政が続かず、市長が変わると計画も凍結され、整地のみされた広い空間が、名ばかりの公園として出現した。
もとが工場のため町の外れにあり周辺に住居もなく、夜はいかにも寂しい場所だ。
しかしここがバイクで乗り入れる暴走族にとって、格好の集会所になった。
数百人はバイクとともに収容できる空間は、やがて夜間、絶えず排気音が響くエリアとなった。
無論住民は近づかなかったが、周辺で暴行、強盗、殺人、行方不明など、凶悪事件が相次ぐようになった。
警察も暴走族が関係していることは承知しているが、何百人もの規模に膨れ上がった暴走族の一人一人を、容疑者として取り調べていくことが困難なほか、集団で襲われ何人も警官に犠牲者が出ており、手をこまねいていた。
そのような場所で、今夜、構成員300人を超す暴走族「狗縷巣」の全体集会が開かれた。
公園として造りかけ放置された盛り土の丘の上に、総長「トオル」が立った。
傍らには、幹部のアキラ、ヤマキが並ぶ。
また、上部団体である反社会的勢力「繁妖会」幹部、斉次も立った。
アキラが叫ぶ。
「これから、狗縷巣の集会をはじめる! お前らいいな!」
「うす!」
300人が声を揃える。
「今日は今までで最高の人数が集まってくれた! 312人だ! 嬉しく思う! まず最初に、総長から話がある!」
「うす!」
「おぅ、総長のトオルだ。みんな今日はよく集まってくれた。まずは今日のゲストを紹介する! 繁妖会幹部、斉次さんだ!」
「うす!」
「斉次さんは、俺たちの活動を褒めてくれている! 近々、繁妖会として、俺たちのうち、何人かを受け入れてくれるそうだ!」
「うす! ありがとうございます!」
斉次が引き取って言った。
「総長、幹部と、主要な隊の頭は、来年からこっちで面倒みる」
「おおおぉ!」
トオルが続けた。
「そういうことだ。だから、今日は、新しい総長を発表する!他の幹部は、新総長が決めてくれ!」
新総長の発表を前に、312人が静まり返る。
「新総長は、マサシだ! 前へ出ろ!」
「おおおおお!」
「マサシは、狗縷巣の活動で、もっとも人間への攻撃を効果的に実行した! 特に、金を振り込ませる詐欺の功績は、非常に大きい! 獲得した資金は、6千万円にも達した!」
「おおおおお!」
「マサシ、一言言え!」
「うす! この詐欺のポイントは、振り込ませた後に、その人間をいかにきっちり消すかだ! 騙された奴が死んでんなら、詐欺かどうかなんてバレるはずがねぇんだ! 詰めをしっかりやるってことだ!」
「うす!」
「俺は総長として、この活動を一層強化していく! お前ら、ついてこい!」
「おおおおお!」
斉次がトオルに声をかけた。
「マサシも頼もしいじゃねえか」
「あざす。マサシの他にも見込みあるやつは多いです。妖力使えば、ほぼ不可能ないんで」
「狗縷巣でしっかり使い方をし込め。腕の見せどころはこっち来てからナンボでもあるんだかんな」
「うす」
そのとき、大きな爆発音がして、集会の後部にいた十数人が大きく吹っ飛んだ。
爆発の震源に全員の目がいったとき、誰かが叫んだ。
「サツか!?」
「人数は?」
「殺せ!」
「どこの世界にいきなり爆発起こすサツがいんだよ」
慶次が呟く。
土煙が風で流され、震源に3人の人影がみえた。
錦が呟いた。
「お前ら、お仕置きの時間だ」




