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53.暴走族と妖魔

 「おい、トオル。こっちに入れるやつ、目星つけたか?」


 「はい、今年も活きのいいのが揃ってますよ。年々、若い奴らの気合の入り方が強くなってる気がします」


 「それだけ、人間の社会に浸透したってことだな。妖魔の血をもつ奴が増えて、んで濃くなってっから。抗争ん時も、相手も妖魔なんだからやりにくくていけねぇ」


 「そこは互いにシマを荒らさず……」


 「まあな、互いの目的は、人間から搾り取ることだかんな。ガチンコはねぇよ」


 「それはそうと、今度300人規模の集会やります。斉次せいじさん、来ませんか?」


 「300人集めんのかよ、やるじゃねぇかトオル。そいつら、もう覚醒してんのか?」


 「度合いはありますが、ほぼ、自覚はあります。幹部は斉次さんも知ってのとおり、アキラとヤマキが8血、9血。総長やらせてもらっている俺は10血ですから、もはや一大妖魔軍すよ」


 「おまえが鳴り物入りで上部組織のうちに入ってくる日が楽しみだな」


 「はい、来年には総長は下に譲るんで、最初から一つチーム、持たせてください」


 「上に言っといてやるよ、集会はいつだ?」


 「来月の9日です。百美台ひゃくみだい公園です」


 「よし、行くわ。期待してんぜ」

 

 にしき慶次けいじ、そして天登あまとは、百美台駅に降り立った。


 時刻は20時。


 大規模な暴走族の集会が行われると聞いていた。

 暴走族は普段は単なる不良として生活し、大それた悪さはしない。

 人間の暴走族も基本的に群れないと何もできないが、これは妖魔としての自覚がある場合でも、一定当てはまる。

 基本的には社会に溶け込んで、人目に触れずに悪さをする傾向があるからだ。


 破邪士側としては、これは捕捉しにくく、妖魔討伐の効率は上がらない。

 したがって今回のように妖魔が一堂に会する機会は、破邪士にとってリスクはあるが、地域の妖魔一掃の大チャンスでもある。

 滅多にないチャンスを事前に掴んだ場合、ゴテンとしても大きな戦力を投入したい。


 しかし各地で連戦する破邪士の人手不足から、今回はにしきを中心としたスリーマンセル1チームのみの投入となった。


 ゴテンとしては、ルーキーに任せるには荷が重いとの考えはあったが、にしきを派遣することで勝算があると評価したのだ。


 「にしきさん、今回の討伐リストにある10血の奴、知ってますか?」


 健一が歩きながら尋ねた。


 「あぁ、トオルとかいう若い妖魔だな」


 「知ってます?」


 「知らん」


 「……。強いんですかね?」


 「知らん」


 「なんか敵の能力とか、ゴテンから情報来てます?」


 「知らん」


 「あの、会話できます?」


 「よく知らん」


 慶次けいじ天登あまとに耳打ちした。

 「俺今、にしきさんが会話できるかどうか聞いたんだけど、通じてないよな」


 「うん……」


 早足で先をゆくにしきを、慶次けいじ天登あまとは慌てて追った。


 集会予定地が近づいた時、路上で円座になって座り込み、タバコを吸っている少年達がいた。


 6人、中学生ぐらいか。

 無言で通り過ぎたにしき達を、リーダー格の少年が呼び止めた。


 「ねぇねぇおっさん達、どこ行くの?」


 にしき達は相手にせず、スタスタと先をゆく。

 去り際に慶次けいじが振り返って、

 「ばあろ、お前ら、早く家帰れ」

 と声をかけた。


 「あ?」


 6人が立ち上がった。


 「おっさんたち、俺らのことなめてんの?」


 「なめてんな」


 「やっちまおうぜ!」


 口々に少年たちが口走り、追いかけてくる。


 「にしきさん」


 「あぁ、こいつら見かけはガキだが、すでに妖魔の自覚がある」


 「いいすね」


 「あぁ、時間はかけるな」


 慶次けいじは振り返るなり静かに言った。


 「俺たちは、お前たちが妖魔ということを知ってる。その上で、帰れと言っている。その意味がわかるか?」


 リーダー格の少年が怯んだが、声を励まして叫んだ。


 「お前ら! 全力でいけ!」


 みるみる少年たちの形相が変わった! 指が鋭く尖り、肌が変色していく。妖力の使い方も慣れている。


 「訓練されてるな」

 にしきが呟いた。


 5人が一斉に飛びかかってきた。

 慶次けいじは、腰を落とし、拳を構えながら、「はっ!」と気合を発した。すると5人はその気合に込められた心気の発散により、一斉に薙ぎ倒された。

 電柱や地面に後頭部を打ち、気絶した者もいる。


 「情けない奴らだな」


 リーダー格の妖魔が、自分のところに吹っ飛んできた仲間の首を、ゴミのように手刀で切り落とした。


 「てめぇ!」


 慶次けいじの怒りが点火した。しかし、天登あまとがいつのまにかリーダー少年のそばにいた。


 「情けないのはお前だ」


 天登あまとは至近距離で妖魔の顔面をぶちのめした。

 鼻血を噴き出しながら妖魔は卒倒した。


 一瞬で片付いた6体の妖魔を見渡し、にしきは、心気を放って次々とその首を焼きはじめた。


 「な、何も殺さなくても!」


 天登あまとは叫んだ。

 にしきは黙って首を焼いていく。


 「にしきさん、やめてください! まだ子どもだ!」


 慶次けいじも同調した。

 言い終わる間に最後の妖魔を焼いたにしきは言った。


 「こいつらは、長じて必ず人間を攻撃する。姿形に騙されるな。こいつらは、自らの意思で、喜んで人間を殺す」


 天登あまと慶次けいじも、反論できない。


 「甘い考えをしてると、お前らが死ぬぞ。妖魔の王、龍虎りゅうこの風貌は、小学生ぐらいのガキだ」


 「!!」


 天登あまと慶次けいじは驚き、立ち尽くした。


 「ほらいくぞ」


 にしきは歩き出した。天登あまと慶次けいじは、慌てて追いかけた。



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