50.新たなチーム
「本部からは、その間の緊急チーム組成の指示が来てるわ」
瑠川が言った。
「驚かないでね。あなたと慶次は、雨神楽錦とスリーマンセルよ!」
「えええええええーーー!!」
いつのまにかロビーに降りてきていた慶次が叫んだ。
天登も驚いたが、慶次のリアクションの方がはるかにでかい。
「あの化け物と!」
「そう! 化け物じみた強さの錦とチームを組むの!」
「でも錦さんは、1人チームじゃなかったですか?」
天登が訊いた。
「そうなんだけど、彼の次の任務が半端なく大きい案件で、さすがの錦くんでも手に余るかもって、伍代さんが言うのよ」
「あの錦さんが手が余る……」
天登と慶次は顔を見合わせた。
「そこで、小雪のことを報告したら、伍代さんが丁度いいと。あいつら、錦に完敗だったから、根に持ってるだろうと。寝首をかく機会をやろうとね」
「寝首をかくって……」
天登が顔の前で手を振る。
「根に持つとか持たないとか、そんなレベルの負け方じゃなかったよなあ。天登」
「あぁ、文字通りの完敗だったよ……」
「まぁとにかく、錦とスリーマンセルは決まりだからね。ゴテンで顔合わせしたらすぐ出発だから、急いでね」
「はい!」
天登と慶次は返事をした。
瑠川が去った後、天登は小雪に言った。
「小雪、なんかあったら、遠慮なく連絡して。すっ飛んでいくから!」
「おぅよ! 俺たちゃ化け物とじゃなく、お前とスリーマンセルなんだからよ!」
「ありがとう」
普段表情の乏しい小雪が笑ったのを見て、大丈夫そうだと天登は思った。
午後、天登と慶次はゴテンに上がった。既に到着していた錦が伍代と話している。
「おぉ、そろったな。武丸に津神。ちょうど任務の話をしていたところだ」
「簡単に言うと、今回は暴走族を潰すのが任務だ」
「暴走族を?」
「あぁ。暴走族ってのは、粋がったガキがやんちゃして世間様に迷惑かけてるだけに見えるが、ありゃ地元の反社会的勢力や半グレなんかへの人材供給源になっていることが多い。つまり社会悪の大きな発生源の一つだ。となると?」
「妖魔が噛んでいる」
天登が答えた。
「そうだ。反社は妖魔の巣窟だ。その素質ある予備軍も、妖魔の血が濃いやつが集まってる。頭はってるような奴らは大概が8血以上。ごくたまにだが、9血、10血もいる。そいつらが感化して若いやつらの血を覚醒させ、パテラの言うことを聞くよう組織化してんだ」
「血の濃い仲間同士が集まってりゃ、妖力の覚醒も進むし、集団心理で人間への憎悪も増幅され、固まっていく。暴走族てのは、そういう機能があんだよ」
「そうなんですね。暴走族って、若い子の社会で当たり前のようにあって、マンガやアニメの題材になったり、むしろ格好いい対象として見られたりすることもあるのに……」
「そこまで妖魔は人間社会に浸透しちまってんだ」
天登は黙っている慶次に気づいた。
「慶次どうした? 神妙な顔して」
「あぁ、言ってなかったけ? 俺、ついこの前まで、族やってたんだ。頭も……」
「そうだったな」
伍代は知っているらしい。
「20人ぐらいでつるんで走り回って、ムカつく奴らがいたら喧嘩してってやってたけど、ただ楽しいからやってた……」
「犯罪は?」
伍代が尋ねた。
「それは……。喧嘩はいっぱいやったけど、仲間を傷つけられた時だ。走りも、俺たちは峠を攻めるスリルを求めて、ドラテク競ったり、マシンいじって性能上げたりして……。でも、カツアゲとか、万引きとか、街中でのスピード違反とか、そういうのは無しだって言ってた。なんか、格好悪いだろって」
「その仲間は将来どうすると言ってる?」
「大体が専門行ったり、工場に就職したり、親の跡を継いだりですけど……?」
「お前が作ったチームは、純粋に走るのが好きで、言わば趣味を楽しむ仲間だったんだな。レアケースだと思う」
「そうなんすね……。ある時、仲間が別のチームに追い詰められて危ないって連絡受けて、俺すぐ行ったんです。相手は10人ほどいましたが、でかい組織の奴らで、刃物出して、ヨダレ垂れ流して、目もイってた。今思えば、あいつらも妖魔だったのか……」
「そいつらはどうした?」
「秒殺しましたけど……」
「はっはっはっ、そりゃもはや破邪士の初仕事だったんだろうな!」
「はぁ」
「ま、そういうことだ! 今回は相手が300人はいて、さすがの錦兄さんも手に余る。いっちょ暴れてこい!」
「妖魔が3、300?!」
天登と慶次は互いの顔を見合わせた。




