48.天登《あまと》の琴線
「この手で我が子を殴ってたのかぁぁ!」
天登はジャマダハルの刃に、大量の心気を流し込み、敵の右肩からもろとも腕を切り落とした。
「ぎええーーー!」
虐魔が逆上し、左手で強烈なパンチを見舞ってくる。天登は右腕の防御は間に合わなかったが、右脇腹に心気を集め、受けた。それでも強力な衝撃に天登は吹っ飛ばされ、河川敷の斜面に叩きつけられた。
思わず胃液を吐く。しかし天登はすぐに立ち上がった。
「さやかちゃんの苦しみは、こんなもんじゃない!!」
天登は両腕にありったけの心気を込めはじめた。心気が一点に凝縮されている証拠に、白ではなく青みがかった輝きになっている。
小雪は、ここまで怒りに震える天登を見たことがなかった。
いつも穏やかで、心気のコントロールをつかむきっかけも、定番の怒りではなく、幸せの感情からだった天登は、瑠川も非常に珍しいと言っていた。
小雪は、天登の中で親子の絆は何より尊いのだと感じた。最も信頼し、全てを受け入れてもらえる相手が、親なのだと。
一方で、小さな子どもは親に依存する。依存せざるを得ない。そんな、物理的にも生殺与奪の権さえ支配できる親の立場で、子供の生存権を脅かした虐魔に、天登は強い憤りを感じたのだ。
天登の心気弾は、青白く、深い輝きを放ち、もはやサッカーボール大にまで大きくなっている。あの凝縮度でここまでの大きさだと、威力は想像を絶するだろう。小雪は剣を下ろした。
「うおおお!! くらえ! 虐魔!」
天登は攻撃しようと前へ出ていた慶次の背後から飛び出し、慶次の肩を借りて二段ジャンプし、上空高く飛び上がった。
虐魔は格好の攻撃対象を得て、大きく口を開けた。特大の妖気を口から放出しようとしている。
「おぃ!天登、あぶねぇぞ!」
慶次が叫び、助けに入ろうとするのを、小雪は手で制した。
虐魔の口から膨大なエネルギーを帯びる妖気砲が飛び出した! 赤く、大きい! しかし天登は意に帰さず、これに向けて放った。
「特大心気弾!!」
天登の心気弾は虐魔の妖気砲とぶつかった! 両者は一瞬そのまま勢力が均衡するように見えたが、すぐに天登が放った青い光が妖気砲をつん裂き、虐魔に迫った!
「うおお! うおお! うぎゃああああああ!」
一瞬あたりは青白い光に包まれたが、目が利くようになると、上半身を失った虐魔の下半身が、ゆっくりと地面に倒れた。その身体は、そのまま蒸気として消えて行った。




