47.虐待の原因
「待てこらああぁぁ!」
河川敷までもう少しというところで、追いつかれそうになった。やばいと思った時、慶次の左蹴りが妖魔の顔面に入り、妖魔は吹っ飛んだ。
「追わなくても、ここがゴールなんだよ、心ゆくまで相手してやんよ!」
天登と慶次は河川敷への斜面を下りた。
小雪も刀を抜いて臨戦態勢だ。
天登は後方のアクラへ女の子を頼んだ。アクラはすぐに少女の容態を診はじめた。命に別状はなさそうなことを、アクラは天登へ、頷いて知らせる。
妖魔がゆっくりと河川敷へ下りてきた。
さっきまで人間として暮らしていたとは思えない、妖魔としてのおぞましい形相になっている。上半身は肥大した筋肉で服が破れ、緑がかった色をしている。
アクラが情報を伝えた。
「このエリアで頻発した実親による児童虐待。促していた妖魔が、この虐魔です。8血です。催魔と同じく、人が微量持つ妖魔の血に働きかけ、脳を操り、児童虐待を実行させていました。複数妖魔でチームを組んでいましたが、慶次さんと小雪さんが倒したのは、この虐魔の部下です」
「最初は人間として生活している中でもうけた実子に、妖魔の血や特性がほとんど現れなかったことに気づいて、虐待をはじめました。それがこの子、さやかちゃんです。既に1年以上は虐待を受けていたと推定されます」
「同じような子を持つ妖魔の仲間に虐待行為を薦め、快感を得るために反復するようになりました。また人間社会へのマイナス影響を狙って、妖力による催眠術を用い、普通の人間も操りました。ここ半年間のこのエリアの虐待件数の異常な増加は、この虐魔が原因と断定できます」
「ありがとうアクラ。もう十分だよ」
天登はボキボキと指の骨を鳴らした。
「さやかちゃんを見てればわかる。コイツは絶対に野放しにしちゃおけない。必ずここで倒す。みんな、行くぞ!」
「おぉ!」
「うん!」
慶次と小雪が応えた。
「おおおお、俺俺俺の楽しみを奪ったのは……、のは、のは、お前らか???」
虐魔は風貌が完全に妖魔のそれとなり、口は顔の右側に大きく裂けたことで、発話もおかしくなっている。
「だまれ」
天登は足に心気を溜め、一気に加速した。右手に心気弾、左手にジャマダハルを装着している。
「あ、天登待てって!近接攻撃はまずは俺と小雪ちゃんでやるってのに!」
向かってくる天登に、虐魔は掌が異様に巨大化した右手で高速ビンタを繰り出してきた。天登は左手の心気弾を平べったく伸ばし、ビンタに合わせて弾いた。




