39.三つ巴戦
「お見事! でもまたまた満身創痍ね」
瑠川がニヤニヤしながら言った。致命傷じゃないことは分かっているようだ。
「あなた、遠隔型にしちゃ打たれ強いわよね。下手な近接型より肉弾戦にも耐えられる気がするわ」
「それって攻撃を避けるのが下手ってことですよね?」
「そうね。天登はまだまだ場数が要るわね」
天登は、瑠川の言葉をジョークとして聞き逃すことはできなかった。
今の信理との戦いや、これまでの妖魔達との戦いを思い返した時、遠隔型として自分が機能できるのは、あくまで強力な近接型パートナーがいるときだけだ。
その連携を断たれれてしまえば、即座に近接戦だったり、直接攻撃にさらされるポジションに回ってしまう。
自ら肉体を晒して接近戦を戦えるようにならないと、これから破邪士として厳しい実戦が待っている中で、やっていけないのではないか。
腫れ上がった顔に、救護班からもらった氷嚢を当てながら、天登は痛感していた。
「近接戦に強くならないと……」
瑠川は、そんな天登を微笑ましく見つめていた。
一方の信理も、付き添いの男の元へ戻った。
「父さんごめん、あんな戦い方をしてくるやつ、初めてだった」
「謝ることなんかないよ信理。君はよくやった。相手の彼はすごい信念を持った破邪士だったね。今回のケースと、彼の信念を、僕たちは学べたんだ。次に活かそう、信理」
信理は泣き顔を隠すように、父の胸に顔を埋めた。
「4回戦 雨神楽錦は不戦勝!準決勝は、15分後に開始します!」
沙夜がアナウンスをした。
救護班の手当を受けながら、天登は言った。
「瑠川さん、小雪は大丈夫なんでしょうか? 俺様子見に行ってきていいですか?」
「さっき見に行ったら、意識ははっきりしてるし、致命傷にはなってないけど、絶対安静が必要。医者が面会も禁止してるから、今はやめておきなさい。まだ戦える状況ではないわ」
「それじゃあ、小雪は勝ったのに準決勝に進めない?」
「そうね。これは棄権になるわ。だから準決勝に進む者が武丸慶次、雨神楽錦、そしてあなたの、3人ってことになるわね」
「また誰かが不戦勝になるのでしょうか?」
「さぁ、今運営側で協議してるんでしょう。とにかくあなたはこの休憩時間を回復に費やしなさい。3人の中であなたが一番ダメージを受けてるんだから」
「えー、お知らせがあります」
沙夜がマイクを握った。
「一回戦の勝者、日皐月小雪は、負傷のため準決勝を棄権します。したがって、準決勝に進む者は3人になりますが、協議の結果……、準決勝は無し。武丸慶次、津神天登、雨神楽錦は、三つ巴で、決勝戦を戦っていただきます!」
「わぉっ、三つ巴! そうきたか!」
瑠川は興奮している。
「面白そうね! 誰も想定していなかったろうから、作戦も何もないわ! とにかくぶつかってきなさい! ほら、武丸君なんて何が嬉しいのかワクワクして喜んじゃってるし、雨神楽錦は、眉一つ動かしてない!」
「はい!」
天登は戸惑いながらも、返事をした。
「3者、前へ!」
天登、慶次、雨神楽錦は、広間中央へ進んだ。
「天登、ひどい顔だな、へへ」
慶次が言った。
「まあね」




