38.愚直
天登は、信理の攻撃に緻密な計算のあとを感じた。
「ご名答。計算して、君が来る場所を導き出してから撃ってるから、予想っていうより、必然に近いけど」
「ほら、右腕、左足、左脇腹、頭……」
信理は立て続けに撃ち続けた。いずれも宣言した部位に命中し続ける。
「はぁはぁ、だめだ、どうしても避けられない。その前に、俺はほとんど動いていない。この場に立ったままだ。なのになぜ俺はわざわざ弾道に身体を持っていってしまうんだ……?」
「それはね」
信理が答えた。
「人間も妖魔も、生物はたとえその場に立っていても、絶えず姿勢を変えている。小さな変化でも、動きは動きだ。その前兆は、身体の様々な部位に現れる」
「人間の身体も、要は物理だ。右手を上げようとすれば、バランスを取って左に重心が移る。それによって胴の位置がズレる。自然法則なんだよ」
「俺の次の動きが物理法則でわかる?」
「そういうこと。もうわかったでしょ?遠隔型の君にとって、僕は相性最悪の相手だってことが」
さらに信理は銃弾を放ち続けた。
重い打撃が全てクリーンヒットしてくる。
正直、今まで戦ってきた妖魔のほどのパワーはない。しかし、どこに当てられるかわからず、全てがクリーンヒットで、その部位の心気を分厚くして守ることもできない。
天登のダメージは確実に蓄積した。
「彼の言う通り、遠隔で戦っていたら相性が悪い……。接近して攻撃だ」
天登は右膝に手を伸ばし、ジャマダハルを装着し、駆け出そうとした。
しかしその瞬間に、天登は大きく前へ転倒した。
「無駄だよ。両足の膝関節に重点的に弾丸を当てていたのはわかったかな?今君の膝はカチカチだ。走れっこないよ」
天登はなんとか起きあがろうとしながら、絶望的な気持ちになった。
「僕の攻撃はとっても地味だ。派手な武器や、心気の技も持っていない。それに僕は子どもで小柄だし、力も弱いから、懐に入られると不利だ。でも、この理に叶った戦い方で、僕は全ての妖魔に勝ってきた。7血だっていた。要は、妖魔に勝てばいいんだ。僕はこのスタイルを貫く!」
信理は、なんとか起き上がった天登に、さらに銃弾を浴びせた。
天登は次々に弾を受けながら、ある結論に達していた。
「避けようとするからダメなんだ。何をしても当たる。なら、少しずつでも距離を詰めるんだ。当たりながらも、距離を詰めるんだ」
天登は、一歩ずつ、歩を進めた。
信理に向かって、間合いを着実に詰めた。
「そんなことをしても、僕の銃弾をくらい続けるだけだ。絶対に保たない!」
信理が横に流れないよう、天登は心気弾を連続的に放ち、心理の左右の行動範囲を限定した。
当てられなくても、それぐらいはできる。
信理はジリジリと下がった。その間も、銃弾を撃ち続ける。
天登の顔は、もはやボコボコだった。身体も打撲だらけだ。
それでも天登は前へ進む。倒れると信理は横へ流れ、また距離を取られてしまう。
倒れない! 進むんだ!
「こ、こいつ! なぜ倒れない! そんな人間がいるはずない!」
信理は、ついに広間の端に至った。
振り返ると、もうあとが無かった。
目を前へ戻した瞬間、目の前に、腫れ上がった顔の天登がいた。
「ヒィぃ!」
天登はジャマダハルがない方の手を、優しく信理の頭に置いた。
「へへ……。つかまえた!」
信理は驚き、次にがっかりし、天登が攻撃してこないことを悟り、つぶやいた。
「ま、まいりました・・」
沙夜が叫んだ。
「勝者! 津神天登!」




