33.小雪✖︎五右衛門《ごえもん》
ほとんど前置きなく、唐突に一回戦が始まった。
しかし小雪、五右衛門の両者は心の準備は万全のようで、互いにスキのない構えを見せている。
五右衛門は抜刀し、右上段に構えている。小雪は柄に手をかけ腰を下ろした姿勢でいるものの、抜刀せす相手から目を離さない。
「小雪は抜刀術の構えね。抜刀術はスピード勝負。小雪の得意とするところだけど、一瞬でまとまった量の心気を細く長く刀に乗せるのが難しい。修行でよっぽど自信を持てたってわけね」
瑠川が解説した。
五右衛門はじりじりと間合いを詰めてくる。
身長180センチはあるであろう五右衛門と、160センチ前後の女子高生とでは、リーチが違いすぎる。
五右衛門はこの有利を活かそうとしているように見えた。
しかし小雪は微動だにしない。じっと相手の動きを見ている。
やがて五右衛門が動いた。
すさまじいスピードで残りの間合いを一気に詰め、無言で上段に構えた刀を振り下ろす!
カッと火花が散り、一瞬白い閃光が辺りを包み、観ている者の目を射った。
天登が目を開けると、両者は互いに同じ姿勢のまま対峙している。
まるで今の接触はなかったようだ。
天登が目を擦っていると瑠川が説明してくれた。
「五右衛門が振り下ろす刀のスピードもすごかったけど、小雪は自分に届く前に、見事に心気をコーティングした刀で切り払ったわ。五右衛門は一瞬で小雪の実力を察したはず。驚いたんじゃないかしら」
構えを厳しくしたまま、五右衛門が口を開いた。
「拙者は田鋤五右衛門と申す。今のは失礼仕った。そこもとの技量をみたかったゆえ」
小雪が応える。
「日皐月小雪。別に」
「相当の使い手とみた。全力で参る!」
五右衛門の身体から心気が立ち上り、刀に凝縮していく。刀は白くなり、やがて銀色に輝き、そして色が刀身に吸い込まれるように消えた。
「まずいわね」
瑠川が言った。
「あの五右衛門という男、身なりから剣技主体と思ったけど、心気主体の男だわ。むろん剣技も常人離れしてるだろうけど、心気で剣を包むだけじゃなく、剣と一体化させるなんて、相当練れてないとできない。小雪にはまだできない芸当よ」
天登は小雪の表情を見た。かすかに、眉が動いたようにみえた。
「さぁどうするかね小雪は……」
五右衛門は互いの距離を保ったまま、腰を落とした。
「千空波!」
刀を横一閃に振ると、斬撃が空を割いて小雪へ一直線に飛んできた!
小雪は目を見張り、床に這いつくばって避けた。
「よき判断! 跳んでかわしていれば、2撃目でそなたは負けていた! 続けてまいる! 千空波!」
五右衛門は目にも止まらむ速さで斬撃を繰り出してくる。
小雪は防戦一方に、かわしたり、切り払ったりしながら、徐々に後ろへ追い詰められていく。
五右衛門の斬撃のスピードはどんどん増してくる。2人の距離が5メートルほどにまで近づいた時、五右衛門が叫んだ。
「とどめでござる! 万空波!」
五右衛門はその場で猛スピードで刀を振りまわし始めた。
最初一迅だった斬撃に後からの斬撃が次々と重なり、半径5メートルはありそうな巨大な斬撃の半球体が猛スピードで小雪を襲う。瑠川が叫ぶ。
「これは避けきれない!勿論受けるなんてことを検討できるレベルじゃない!」




