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31.ゴテン

 「さあ着いた!ここがゴテンよ!」


 瑠川るかわの話に聞き入り、いつのまにか道なき森の中を進んでいたが、その切れ目から一気に視界が開けた。


 ゴテンと呼ばれた破邪士の本部は、天登あまとは砦のような戦う機能を重視した建物を想像していたが、目に飛び込んできたのは、隠れ家のような温泉街の風景だった。


 「どう?秘湯の旅館街って感じでしょ?。但し主も客も従業員も、みんな破邪士の関係者って点だけが特殊ね」


 紅葉した葉で彩られた木々が小川に沿って立ち並び、時折り川面のキャンパスに筆を引くように、落ちた紅葉が赤を加えている。


 目を上げると雄大な紅葉山を借景に、石畳と石段で作られた緩やかな傾斜道の両脇を、木造の宿が軒を連ね、落ち葉を掃いたり、温泉饅頭を振る舞ったりする従業員の山吹色の作務衣姿が、見事な絵画のような配置である。


 「ここには破邪士しか来ないんですか?」


 天登あまとが訊いた。


 「お客はね。戦いの傷や疲れを、破邪士はこの湯治場で癒す。従業員はそのお世話がかりね」


 「お金を払うんですよね?」


 天登あまとは貧しい家庭の高校生だ。心配である。


 「もちろん全部無料。だって命を張って人間社会に貢献してるんだから、当然でしょ?」


 「じゃああの人たちの給料は……?」


 「税金」


 小雪が口を挟んだ。


 「そ。破邪士の活動は国家事業だからね。まぁ、知る人ぞ知るだけど、ちゃんと国家予算がついてるのよ」


 3人は話しながら川沿いの緩やかな坂道を山に向かって上っていった。


 世間の喧騒が嘘のような落ち着いた雰囲気だ。


 天登あまとは、ここなら戦いで疲れた心も癒えそうだと感じた。


 やがて3人は、坂道を上り切り、さらに奥まった場所にある、辺りで最も大きな純和風旅館の前に立った。


 「大きい」


 小雪がつぶやく。


 「そうね。5階ぐらいはあるかしら。木造の旅館風建物としては大きいわね。ただここは宿泊施設じゃなくて、天守様の居城、ゴテン本部よ。破邪士組織を運営していくためのあらゆる機能がある。広すぎて迷っちゃうから、最初は最低限使う部屋だけわかってればいいわよ」


 「よう、瑠川るかわ!」


 太い声の大男が瑠川るかわに声をかけてきた。


 「あらやだ! 大海おおみちゃん、もう来てたの?!」


 「今着いたところだ! 久しぶりだな! お、その2人が、今回の教え子だな! 俺は胴間大海おおみだ。そしてこっちが……」


 遠くで作務衣の女性従業員に声をかけている男がいる。


 「おぃ! 何やってんだ慶次けいじ!こっち来い! 挨拶しろ!」


 「あ、師匠、ごめんごめん!」


 走ってきた男は金髪ツーブロックでピアスをし、背が高く筋肉質の男だった。


 「俺は武丸慶次けいじ! よろしくな!」


 「俺は津神つがみ天登あまと、よろしく」


 「日皐月ひさつき小雪」


 小雪は無表情だ。


 「あ! 合格発表であほな質問してた子だ!」


 瑠川るかわが言った。


 「そうなんだよ、こいつアホでさー。でも根性と腕っぷしは保証するぜ」


 胴間が言った。


 「そうそう、ま、よろしく! あ、俺年上好みだから、小雪ちゃんには近づかないから、警戒しなくて大丈夫!」


 慶次けいじの言葉の意味がわからず、小雪はきょとんとしている。

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