29.血の濃度
「さあ着いた!」
瑠川、天登、小雪は、バスを降りた。
11月の北海道は本州の真冬のようだ。
「ここからは歩くよ!3時間!」
「はい!」
天登は返事をした。
歩くぐらい何でもない。小雪も涼しい顔だ。
歩きながら、瑠川が妖魔のルーツを語ってくれた。
「本当はもっと早くに教えておくべきだったんだけどね」
瑠川は前置きした。
「妖魔って、人間と混血してるでしょ?でも古代の最初は、人間も妖魔も、それぞれ100%の純血だったの」
「人間と妖魔は、互いに知的生物で、見た目も普段は変わらない。でも種族が違うってことで、住む土地や資源を巡って、争ってきた。約3000年前からと言われているわ。寿命や腕力で勝る妖魔は、最初は人間を圧倒していたんだけど、次第に人間は武具の製造、集団戦法、繁殖力の差による数、破邪士の登場などで、妖魔の勢力を押し返すようになった」
「パワーバランスがひっくり返ってからは、人間は妖魔を、日本列島の北へ北へと追いやった。本州を追われ、妖魔が蝦夷地と呼ばれた北海道まで後退した時から、人間の攻勢は落ち着いたものの、妖魔は壊滅的な打撃を被っていて、いつしか組織的抵抗をしなくなった。それから1000年ほど経ち、妖魔の中にある血族が現れた。それが、龍虎一族」
「妖魔の棟梁と呼ばれていて、一世一代しか存在しない。今の代の龍虎は、200歳を超えていると言われている」
「龍虎一族は、人間に対してある長期戦を仕掛けた。それが、混血による人間社会への妖魔浸透だった。すなわち、妖魔であることを隠して人間と結婚して、子を作る。その子がまた人間と結婚して子を作るといった方法で、妖魔の血を人間界へ浸透させていった。今では妖魔の血が混じらない人間の方が、見つけることはむずかしい」
「妖魔と人間の混血として生まれた子は、邪気を持つ。社会に存在するあらゆる犯罪、これを生む憎悪や残虐性、利己主義は、凶悪なものほど妖魔の血が関係していると言われているわ。例えばどこにでもあるいじめやパワハラなんてのも、人間に混じっている妖魔の血によるものが大半。よく言うサイコパスなんて、大概そうね」
「妖魔の血の濃度は、人類平均で5%以内と言われている。あ、濃度って言っても、仮に人間と妖魔の100%同士が交配したとして、単純に子が50%になるって訳じゃない。詳しいことはわかっていないけど、体内で血同士の浸食、せめぎ合いが生じて、濃度は変化すると言われているの」
「ちなみに濃度ごとの特性では、5〜10%で、意地悪、怒りっぽい、自己中心的な性格傾向。10〜20%で、犯罪を生活上の選択肢に選ぶ傾向が出てくる。お金が欲しいと思った時に、当然のように強盗っていう選択肢を検討するみたいな。良心が弱く、刑法はすり抜けるものという感覚。ただ隠蔽工作を駆使するなど社会生活は継続しようとする。サイコパスや、パワハラがひどい場合も10%台後半が多い。」
「20〜30%で、凶悪犯罪者が出始める。快楽や趣味で、殺生や人を陥れることをやるって感じ。ここまでは、身体的能力は常人の分布状況と大きく変わらない」




