25.母のアザ
「あら、天登、お目覚めね!」
瑠川が病室に入ってきた。
「あ、瑠川さん。アクラのおかげで、腕もくっつきました」
「そうでしょう。アクラはね、破邪士団随一の医療技術を持っている。それに気づいていると思うけど、妖魔なのよ」
「うんうん」
アクラがうなづく。
「妖魔は心気を帯びた破邪士を食うことで、パワーアップすると言ったわよね。これは動物でも可能なの。つまり、心気を含む動物を体内に取り込むことで、妖魔はその特長を得てパワーアップすることがある。アクラの祖先は、その昔、長く生きた結果、心気を帯びるようになったネコを体内に取り込んだ。その後何代もを経て、アクラが生まれた。でもここからが奇跡なんだけど、アクラには邪心が全くないの。妖魔の血の濃度では4割ほどだから、人間と妖魔の混血なら、まず強い邪心を持つはず。でもアクラにはそれがなく、しかも心気の質が傷の治療に特化しているのよ。本当なら、千切れた腕を繋げるなんて、今の医学でも難しい。アクラの特殊な心術で組織の再生力を爆発的に高めた結果、できたことなの」
アクラはおどおどしながらも、うれしそうだ。
「アクラはね、こうやって今までも多くの破邪士を救ってくれた。今では本部もアクラを正式に医療担当の破邪士と認めて、こうして負傷した破邪士の治療を担ってもらってるのよ」
「そうだったんだね! アクラ、君はすごい力を持ってるんだね」
天登は続けた。
「アクラ、君がもし知っているなら教えてほしい。俺の母さんの、治療のことなんだ」
アクラは悲しそうな顔をし、瑠川が口を挟んだ。
「天登、それは私からアクラに頼んで、実はすでに試みてもらった。期待させるのもよくないから言わなかったけど、結論から言うと、アクラの力ではお母さんの治療はできなかった。妖魔の血で生を保っていることは、『治す』という概念では、対処法として違っていたようなの」
「そうですか……。わかりました。謎を解くには、やはり妖魔の中枢に迫る必要があるということですね」
「そうなるわね。ただ、お母さんのアザについては、アクラが症例を知っていた。アクラ、話してあげて」
力強くうなづき、アクラが説明をはじめた。
「天登の、お母さんの腕のアザは、結論から言うと、妖魔の血は関係ないです」
天登は驚いた。
「これは、心気によるものです。それも、強力な破邪士がお母さんに付与したものと思われます」
「なんだって?!破邪士が?」
「はい。破邪士としての活動をしているかはわかりませんが、心気を使う者に間違いないです。なので妖魔ではないです」
「母さんが、破邪士に関わりがあったということか……」
「そうなります。それも、相当前のことです。20年近くは経っているように感じます」
「そんなに前だって?俺が生まれる前……。瑠川さん、本部なら、何かわかっていることがあるのでしょうか?」
「私も驚いたけど、その可能性は低いと思うわ。勝手で申し訳ないんだけど、本部として天登をリクルートする時、あなたの家族や家系については、何代も遡って調査しているの。妖魔と人間との関わりは、血筋と深い関係があるからね」
「でも、あなたの身内や祖先、関係者に、少なくとも本部が認識している破邪士はいなかった。わかっていたら必ず私に情報がくるからね。つまりお母さんが、どういう関わりで心気に触れたのかは、不明ということになるわね」
「そうなんですね……。アクラ、このアザは、母さんの身体に何か悪い影響があるのかな?」
「私の考えでは、むしろ良い方に働いていると思います。お母さんを守るために、心気を注入したような気を感じます」
「そうなんだ!」
天登は母の病状に進展が見られない中、少しの光明を見た気がした。
「俺もそうだったらいいと思ってた。でもなぜ、今アザが出てきたんだろう。そんなに前のことなら、もっと早く出てきても良さそうなのに」
「それはわかりません……。お母さんが眠ってしまっていることと関係があるのかも、今は断定できないですね……」
アクラは申し訳なさそうにした。
「いろいろ聞いてごめんね、アクラ。心配はなさそうなことがわかってよかったよ。ありがとう」
最後に瑠川が締めた。
「さ、今日はもう遅いから、みんな休みましょう。明日、破邪士試験の合格発表があるわ。明日朝からゴテンにzoumを繋ぐから、私たちの長、天守様直々の発表を聞きましょう」
第一章「天登立志編」をお読みいただき、ありがとうございました!
次回からは、新章「天守御前試合編」がスタートします!
天登の仲間達、妖魔に立ち向かう全国組織、妖魔の首領の正体など、徐々に全貌を明らかにしていきます。
ますます加速する天登の成長を、じっくりお楽しみください!




