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破邪の気炎 〜手遅れの世に、人ができる残されたこと〜  作者: 北岳 梟
天登《あまと》立志編
24/99

24.アクラ 

 いつから、道を踏み外したんだろう……


 子どもが好きで、私の知っていることを何でも教えたくて、教えて、懐いてくれるのが嬉しくて、教師になったんだった……


 でもいつの頃からか、子どもを好きな気持ちが変に歪んでいった。

 

 可愛いのに、愛おしいのに、失いたくないのに、傷つけてしまう。


 可愛すぎて、抱きしめたくて、エスカレートして、女の子の耳をかじっちゃった。


 泣き喚く女の子の血の味に正気を失い、気がつけばその子を丸呑みしていた。


 私は、子どもが可愛いだけなのに。


 私が知っていることを教えたかっただけなのに……


 悲しいよぉ。悲しいよぉ。


 教師になった、あの頃に戻って、やり直したい‥‥。


 天登あまとは夢を見ていた。


 サキュバスの最後の思念だろうか。

 彼女の、櫻井桃子としての記憶のようだった。

 本物の彼女の思念かどうかはわからない。

 

 天登あまとの意識が戻りかけている。それに反比例するように、櫻井桃子の思念と思われるものは、意識の底へと沈んでいった。

 

 天登あまとが目を覚ましたのは、学校の保健室のような部屋だった。

 朦朧とする意識を奮い起こし、上体を起こそうと両手を支えにしようとした。


 ん? 両手で支える? 

 俺の左腕はほとんど千切れてたんじゃ‥‥?


 その時、ベッド脇に、不思議なものが見えた。


 動いている。


 ん? 耳? ネコの? 


 天登あまとは意識をしっかり保とうと、今一度目をぎゅっと瞑り、再び開けた。

 

 見た。


 やはり、でかい、赤いネコの耳が、ベッド横から出ている。


 「ネコ……?」


 天登あまとは自分の意識がはっきりしてきたことを自覚した。


 「あの、君が俺を治療してくれたの?」


 異形の妖魔と戦ってきた天登あまとにとって、化け猫程度は、可愛いものに感じられた。もとより、このネコからは邪気を微塵も感じない。


 「は、はい! 私があなたの担当医の、ア、アクラです!」


 耳から下の顔がのぞいた。

 確かに化け猫のようだが、幼女のような可愛らしい顔つきだ。


 「そうか、ありがとう。腕も、君がくっつけてくれたの?」


 「は、はい! 痛くないですか?」


 天登あまとは左手をぐっと握って、開いてみた。

 違和感なく、しっかりと力が入る。


 「とてもいい感じだ。本当にありがとう。アクラはすごいお医者さんなんだね!」


 「えへへ、よかったです」


 天登あまとは上体を起こしながら言った。


 「俺は天登あまと。妖魔と戦ってたら、意識を失っちゃったみたいだ。どれぐらい寝ていたんだろう?」


 「1週間とちょっとです! 小雪さんが、ずっと寝ないで看病してました!」


 アクラが指し示す方をみると、小雪が刀を抱いて椅子に腰掛けた姿勢で眠っていたが、ゆっくりと目を開けた。


 「天登あまと? 意識が戻ったの?」


 「うん、小雪、看病してくれたんだね、ありがとう、もう大丈夫だよ!」

 みるみる小雪の目に涙が溢れる、しかし小雪はぐっとこらえた。


 「約束……。あの時、守ってくれて、ありがとう」


 小雪は涙声を必死で絞り出し、一語一語を発した。


 「仲間じゃないか。そんなこといいんだよ。あの時、実は俺は挫けかけていた。小雪の呼ぶ声で目覚めたんだ。俺の方こそ、ありがとう!」


 天登あまとの明るい返事に安心したのか、小雪は力が抜けたようだ。


 「それで小雪、サキュバスはどうなった?」


 「あなたと私で、倒した。討伐リストからも、削除された」


 「人質の高校生は?」


 「無事だった。2人いて、どちらも衰弱し切っていて、サキュバスに食べられる寸前だったけど、命には別状はなかった。警察病院に入院したけど、3日後には退院して、もう学校に行ってる」


 「そうか! よかった! 今まで食べられた人達は助けられなかったけど、最後の被害者は救えたんだ!」


 「うん」小雪がうなづいた。


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