表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破邪の気炎 〜手遅れの世に、人ができる残されたこと〜  作者: 北岳 梟
天登《あまと》立志編
23/99

23.戦う意味

 天登あまとは、意識レベルが極限まで低下し、自己を保てずにいた。もはや、ちっぽけに残った天登あまとの理性は、戦うことを諦めていた。


 (俺、普通の高校生じゃなかったか?なんでこんなつらいことをしてるんだ?なんでこうなった?)


 天登あまとの意識が混濁してくる。その時、誰かの声がした。


 (アマト!アマト!)


 (誰かが俺を呼んでいる……。小雪かな……)


 (アマト!アマト!)


 (小雪には、申しわけないな。もう、俺はここまでだよ……)


 (アマト!何のために戦っているの?)


 (それは、母さんを治すためだ。分かりきっている)


 (もう、やめるの?あの幸せだった日々を取り返すのを、あきらめるの?)


 (……)


 (それでいいの?あなたがあきらめれば、あかりちゃんもつらい人生になる。小雪ちゃんも、この場で倒れるかもしれない)


 (小雪ちゃん……?この声は……、母さん?)


 (そうだ。俺は、母さんを治すために破邪士になったんだ)


 (あかりにも誓った。小雪も一人で頑張っている。腕が千切れかけたぐらいで、諦めている場合か!)


 天登あまとは我に返った。すると目の前に、小雪の顔があった。天登あまとの名を呼び続けていたのは、小雪だったのだ。


 「小雪、ありがとう。君の声がはっきり聞こえた。そして、一瞬夢もみてた。呼んでくれなかったら、ちょっとやばかったよ」


 天登あまとは策を思いついた。


 「小雪、俺はあと一度だけ、心気弾を打つ。それでなんとか間合いを詰めて、サキュバスに攻撃してほしい」

 「でも、あなたは止血に集中しないと……。それに、その左腕は、もう……」

 「うん、わかっている。でもそれしか方法がない。考えている時間はない!」

 天登あまとは心気を溜め始めた。


 「小雪、ただ、サキュバスの急所がわからない。でも必ずあるはずだ。俺が心気弾を散弾で打ち込む。その時、奴が無意識に庇うところ。そこが急所だ」


 「わかった!やってみる!」

 「あぁ。一回こっきりだ!」

 「死なないで。生きてるあなたに、お礼を言わせて!」

 「こっちこそだ!いくぞ!」


 天登あまとは立ち上がり、残った右手に心気を集中した。心気を集めていた左腕の傷口からは、血が吹き出しはじめた。


 「お前、捨て身の攻撃だね。ご苦労なことだよ。受けてやる!放ってこい!」


 その時、天登あまとのペンダントが青く輝きはじめた。天登あまとの心気に呼応しているようだ。

 (父さんも、俺を応援してくれている!俺は、やれる!)


 サキュバスは天登あまとに残った力は少ないと見て、受け止める構えをみせた。


 (身体ごと避けられたら急所を判断できないと思ってた。しめた)

 天登あまとはわざと、心気を凝縮させずにスイカ大の大きさにした。ダメージ範囲を大きくするためだ。

 「くらえサキュバス!これが最後だ!心気弾……散!」


 天登あまとの右腕から飛び出した心気弾は無数の粒となり、直径1メートルほどの範囲に広がってサキュバスに向かって一直線に飛んでいく。

 散弾状になった弾を受けるため、サキュバスが体の面積を小さくしようと身体を捻った。その仕草が、左脇腹を後ろにするような印象があった。


 散弾がサキュバスに次々と命中する中、天登あまとは薄れゆく意識の中で隣を見た。

 すでに小雪はいない。

 天登あまとは膝をついた。気力はもう、尽きたようだ。右手で左腕の傷口を押さえる。


 小雪は天登あまとの覚悟を想っていた。

 大怪我の中、自分を賭して、勝機を見出した天登あまとを、破邪士の後輩ながら、素直に尊敬した。


 「このチャンス、絶対に無駄にしない!」


 小雪はサキュバスに散弾が命中する中、敵の背後に回り込んだ。急所がどこであれ、散弾から遠ざけると踏んでいた。

 それは背後だ。サキュバスは小雪を目で追っていたが、散弾が途切れない!

 小雪が刀に心気を込める!


 「白華剣!」


 小雪の刀は、サキュバスの左脇腹を貫いた。刀を握った小雪が声を上げる!


 「ここから!」


 切り口から心気の光がほとばしり、傷口へ心気が注ぎ込まれ、中で膨張していく。


 「うぎゃああああ!!入ってくる!入ってくる!」

 サキュバスが叫ぶ。


 「天地、鳴動!」

 小雪が叫んだ。


 その時サキュバスの中で膨張した心気が極大化し、その身体が大きく膨れ上がっていく! 

 「ぎゃああああ!!身体が!身体がぁぁぁ!」


 大きな破裂音がした。

 

 ……………………



 その後、サキュバスの散り散りになった組織が雨のように降り注いだ。

 降るそばから、次々に蒸発していく。サキュバスが絶命したのだ。

 

 天登あまとは敵の絶叫を遠くに聞きながら、意識を失った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ