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破邪の気炎 〜手遅れの世に、人ができる残されたこと〜  作者: 北岳 梟
天登《あまと》立志編
22/99

22.ジャマダハル

 サキュバスが言ったとおり、2体に分かれてもそれぞれの戦闘力は落ちていない。

 相手は天登あまとがジャマダハルを抜くスキを与えてくれない。このままではジリ貧で殺されると悟った天登あまとは、腹を括った。


 「おや?諦めたのかい?」


 サキュバスBが言った。

 天登あまとは防御の左腕を下ろし、右腕だけを残した。

 容赦なく振り下ろされる爪を、心気を最大限に集中した右腕のみで受ける。

 痛みが倍増したが、天登あまとは気力で耐えた。ようやく作れた時間を使い、天登あまとは左膝からジャマダハルを抜き、心気を込めた。ジャマダハルが青白く輝く。


 「関係ない!くらえ!」


 サキュバスBは渾身の爪を振り下ろしたが、天登あまとはこれをジャマダハルで払った。

 敵はバランスを崩す。天登あまとはすかさず右掌てのひらに心気を溜め、相手の腹部を目がけて放った。至近距離で心気弾を受けたサキュバスBの体からメリメリと音が発せられ、敵が後ろに下がる。


 「おのれおのれ!!」


 怒ったサキュバスBが再び突進してきた。

 天登あまとは腕の痛みを脳裏から振るい落とし、ジャマダハルをもった左手首を右手でつかみ、さらに心気を込めた。


 「死ねぇ!!」


 Bが爪を振り下ろした時、天登あまとはジャマダハルを握った左腕を突き出した。心気は剣先を超えて勢いよく伸び、突進してくるBの腹部を貫いた!


 「うぎゃああああ!」


 サキュバスBが絶叫する。


 「とどめだ!」


 天登あまとは右手で作った心気弾をBの顔面に向けて放った!

 Bの血の造形でできた顔半分が吹っ飛び、Bはもはや声も発せられないまま、そのまま仰向けに倒れた。


 「はぁ、はぁ、なんとかなった‥‥」


 天登あまとは息も絶え絶え、小雪の方をみた。

 ちょうど、小雪の斬撃により、サキュバスAの血の造形部分が切り離され、崩れ落ちるところだった。

 小雪も勝ったのだ。


 「くっ!」


 天登あまとは流血する両腕から急に痛みを感じた。戦闘が終わり、噴出していたアドレナリンが切れたのだ。


 妖魔は死ぬと蒸気のように消えて無くなる。しかし半身でそれぞれ横たわるサキュバスは、消える様子がない。

 天登あまとと小雪はこれに気づかない。小雪は刀の血を払い、鞘に収めた。天登あまとは左腕の出血を止めようと、心気を当てている。


 やがてサキュバスの半身の継ぎ目同士から無数の血管や神経が伸び出し、互いに結びつきはじめた。


 2人が気づかず、背を向けて歩き出そうとした時、身体を再生したサキュバスが右手をドリル状に変え、目にも止まらぬ速さで腕を伸ばし、小雪の背に向かって突き込んできた!


 天登あまとは空気の変化を感じ取り、小雪より一瞬早くその動きに気付いた。


 「危ない小雪!」


 天登あまとは思わず手を伸ばし、小雪を突き飛ばした!しかし代わりに天登あまとの腕がサキュバスのドリルに貫かれた。


 「ぐぁ・・・・」

 声が出ない。

 天登あまとの腕はほぼ皮のみで繋がっている状態になった。


 「ギャハハハハハ、油断したな小僧ども!私の決死の演技が腕一本じゃ割に合わないがね!」


 「おのれっ!」


 小雪の髪が怒りで逆立ち、一気に刀へ心気が伝わる。


 「白華剣、虚空閃!」


 一瞬小雪の姿が消え、いきなりサキュバスの懐で姿を現し、刀を下から上へ切り上げる。


 「おおっと!」


 サキュバスはなんと自らの身体を先ほどと同じく縦に裂き、小雪の刀は空を切った。ガラ空きの小雪の胴へ、強烈な右前蹴りがモロに入る。小雪は吹っ飛び、天登あまとにぶつかり、2人で倒れた。


 「お前たち付き合ってるんだったな、2人でおねんねさせてやったんだ、ありがたく思え!へへへへ!」


 サキュバスは再び身体を繋ぎ合わせた。

 天登あまとは千切られかけた腕の傷口をみて呆然としていた。心気を集中し、止血を試みなけれびならない。しかしあまりのショックに、そんな考えになど心理状態が及ばない。痛みに、天登あまとは意識を失いそうになった。


 (死ぬほど痛い……。もう、意識を失ってしまいたい。人間の神経は、きっとこんな怪我をまともに認識できるようにはなっていない。死んだ方がましなんじゃないか……)




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