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破邪の気炎 〜手遅れの世に、人ができる残されたこと〜  作者: 北岳 梟
天登《あまと》立志編
18/99

18.あかりの想い

 そこには、あかりがいた。

 驚きで立ち尽くしている。

 みるみる涙が溢れ、頬を伝っていく。


 「天登あまと……。嬉しい。天登あまとだ……。もう会えないかと思った……」


 「大袈裟だよあかり。LIMEしてるだろ?」


 「してるけど……。実際に会えないと、元気かどうかも、わからないもん……」


 「全然来られなくて、悪かったよあかり。あかりが母さんを守っててくれたおかげで、俺強くなったよ」


 「うん、わかる。天登あまと、なんか変わった。身体も、背も、大きくなったし、顔つきも……。修行、つらかったんだね」


 「うん。つらかったけど、もうすぐ母さんを治す方法を探しに行けるまでになった。あかりがいてくれるからだよ。本当にありがとう」


 あかりは泣き出し、天登あまとにしがみついてきた。

 天登あまとはあかりの背を、いつまでもさすっていた。


 「天登あまと、ちょっと気になることがあるんだ」


 落ち着きを取り戻したあかりは、母の掛け布団を少しめくり、母の右腕を出した。

 すると、母の白い腕の内側に、うっすらと黒いシミのようなアザが浮き出ている。


 「昨日、気づいたんだ。先生に言って診てもらったんだけど、原因はわからないって……」


 「なんだろう。妖魔の血と関係があるんだろうか……。瑠川るかわさんに訊いてみる。あかりも、アザに変化があったら教えてほしい」


 「うん、もちろん!」


 その夜、夜回りを20分で終えた天登あまとと小雪を、瑠川るかわは本殿に集めた。


 「破邪士にもユニフォームがあってね。今までの稽古着じゃなく、これを着て行ってもらうよ」


 瑠川るかわが出してきたユニフォームは、黒のロングジャケットだった。襟が立っており、前でボタンを留める。


 「樹齢1000年を超える仙木の繊維が編み込まれている。木の心気が込められていて、物理的に丈夫なのはもちろん、妖魔の妖力にも耐性がある素材なんだ。早速着てみて」


 天登あまとと小雪は着替えた。女性用はジャケット丈が腰までだ。


 「よし、ピッタリだね。あとは武器だ。小雪には、これ」


 小雪は鞘に入った刀を受け取った。

 「今までの無銘のものでも心気を込めれば十分過ぎる切れ味だけど、武器にも心気に呼応して、より力が増すものがある。この『楓』にはその特性があって、剣技のスピードや威力を強くサポートする。スピードが武器の小雪にピッタリの刀だね」


 「ありがとうございます」


 小雪は刀を抜いてみた。

 瞬間あたりに爽やかな風が通った。刀身は緑がかっている。


 「手に吸い付くよう……。軽い」


 「刀も君を欲しているようね。軽くても、刀身はしっかりしてるでしょ?次は天登あまと、君はこれ」


 瑠川るかわは一振りの短剣を天登あまとに手渡した。


 「この短剣は『ジャマダハル』と言って、南アジアの伝統武具なの。その昔、はるばるインド洋まで遠征した倭寇が持ち帰ったと言われている。鞘を払ってみて」


 「ジャマダハル」は、刃渡り50センチメートル、幅は15センチメートルほどで、武道家が用いる爪状の武器のような握り箇所がある。切るより、刺す方に特化したような形状だ。


 「天登あまとは強力な遠隔攻撃を持っているね。しかし間合いに入られると弱い。ジャマダハルは扱いやすく小回りが利くし、防御にも使える。右手で心気弾を打つなら、左手で使えばいい。それに心気を流しての使い方は、君の工夫次第だ」


 天登あまとは初めて触れた武器とは思えないほど、この武器でできそうなことがありありとイメージできた。

 「ありがとうございます」


 天登あまとはジャマダハルを鞘に収め、左膝にベルトで固定した。


 「よし、準備は整った。これから卒業試験の任務を説明するわね」


 説明が終わり、解散後、天登あまとは瑠川を呼び止め、母のアザのことを説明した。


 「なるほど。妖魔の血が原因の可能性はあるけど、私は聞いたことがない症例ね。実は破邪士には、治療を専門に働く者もいる。当たってみるわ」

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