17.卒業試験
あれから半年が経った。
季節は春となり、フレッシュな空気に世間は沸き立っている。
天登のカリフラワーは、今や長槍程度の長さにまとまっていた。あまりの凝縮量に、鮮やかな青い金属のような固形感がある。
小雪はこのトレーニングを始めて三ヶ月後には心気の訓練を終え、剣技を磨くべく、居合の名人の稽古場へ通っていた。
「よくなってきたね」
瑠川が声をかけてきた。
「はい、だいぶ心気を束ねられるようになりました。身体へ巡らすのも、慣れてきています」
「よし。それじゃあ、そろそろ、卒業試験をやってもいいかもね。本堂に集まって」
神社の広い本堂の中央に座った天登と小雪は、身を引き締めて瑠川の言葉を待った。
「実は、破邪士の卒業試験は、実戦です。最後に一つの任務をこなして合格することで、ようやく一人前になるの。それは、討伐リストの妖魔を一体、退治すること」
「はい。ワシルクラスの妖魔ですね」
天登が答えた。
「そうね。今のあなたたちの場合、7血以上が対象になる」
「妖魔の血が7割の相手……」
「そう。そのクラスになると、明確に妖魔として、人間界の転覆を狙った活動を日常からしているわ。そして活動エリアの下級妖魔を従えて、組織的に行動していることが多いの。」
「ワシルクラスも、同時に現れるかもしれないってことですね……」
「本番の日は、本部と調整して、どのターゲットを狙うかを決める。もちろん私も同行するし、もしもの場合は介入するけど、決して万全とはいかない。死の危険もある。心してかかりましょう」
「はい」
「ま、小雪もめちゃくちゃ仕上がってるし、心配はしていないわ。日取りが決まるまで、訓練は夜回りだけでいいわよ。ゆっくり身体を整えておいてね」
天登は、昼間に時間ができるようになったため、修行開始以来行けていなかった母親の病院へ行った。
あかりからのLIMEで母の様子は簡単には聞いているが、夏だったあの事件から、今はもう春になっている。
病室のドアを開けると、あの時と全く同じで、母はベッドに横たわっていた。
とても血色がよく、すぐ目覚めてもなんら不思議じゃない。天登は傍らの丸イスに腰をかけた。
「母さん、俺やっと、修行の最後まで来たんだ。破邪士として最後の卒業試験で、強い妖魔と戦う。あの日の俺に今の力があったら、母さんをこんな目に遭わせることはなかった。ごめん。でも俺、もっと強くなって、きっと母さんを治す方法を見つけるから。もう少しだけ、待ってて欲しい」
気のせいか、母が頷いたような気がした。
立ち上がった時、ノックがあった。
はい、と応えると、すぐに病室のドアが開いた。




