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生まれながらの姫と作り上げられた皇帝

瑠璃光を襲ったのは、聚周と成徳の術に染めれた風蘭だった。

第49話 生まれながらの姫と作り上げられた皇帝


「しばらく様子を見ようだって?」

紗々姫は、声を荒げた。

「そうそう、ヤキモチやくなって」

事の次第を、見守っていた阿と吽も、紗々姫の苛立ちがわかって、困惑していた。紫鳳の腕に抱かれて、頭を撫でられていたが、窮屈な思いだ。紗々姫は、何か、不吉な感じがして止まらない。瑠璃光は、解毒出来たはず、が、一向に目を覚ます気配がない。陽の元の国とは、違うのか。紗々姫は、眠りに落ちた瑠璃光の顔を見下ろす。

「瑠璃光。いい加減、目覚めていい筈」

人差し指を、瑠璃光の両瞼の上にかざす。左右に、動かし額に指を立てる。紗々姫には、元々、妖の気があった。幼い頃から、人質として、城郭の奥に囚われ、三華の塔の中だけが、彼女の世界だった。長く妖の中で、育った為、妖を見る目は、瑠璃光よりあったのかもしれない。

「紫鳳。瑠璃光の中に入って」

紫鳳は、首を振った。

「できるなら、行っている。瑠璃光の意思がなければ変わらない」

「役に、たたない。式神ね」

紗々姫の苛立ちは、最高潮だった。

「瑠璃光が目覚めないと、動けないなんて」

紫鳳は、申し訳なさそうに、眉を顰めた。

「今度は、そうしておく・・・」

紫鳳が言いかけた時だった。瑠璃光の隣に横たわっていた風蘭が、目を開けた。

「風蘭!」

青嵐が、飛びつきそうになったのを紗々姫が止めた。

「危ない」

止める紗々姫の腕を、しっかりと握る風蘭の目は、虚だった。

「離しなさい!早く」

紗々姫は、きつく握る風蘭の手を、剥がそうとするが、力が強く、叶わない。骨が、ミシミシと言っている。

「紗々姫!」

紫鳳が、紗々姫を救い出そうとし、変化する。勢いよく両翼が、背中から飛び出すが、紗々姫は、捕まった腕とは、逆の腕で瑠璃光の体を押し出した。

「瑠璃光を守って!」

力無く瑠璃光の体は、寝台から崩れ落ち、青嵐が駆け寄り抱え上げる。紫鳳の楊翼は、風蘭を仕留めようと、体の両側から狙うが、躊躇してしまう。

「どうすればいい」

「迷わないで!裂いておしまい!」

紗々姫は、怒りのあまり変化寸前だった。

「無理言うなよ。」

ゆっくりと起きあげる風蘭を前に、紫鳳は、何も出来ずにいる。

「何も出来るわけないな」

風蘭の開いた口から聞こえてきたのは、聚周の声だった。

「その声は・・」

紫鳳と青嵐は、顔を見合わせた。

「成徳の呪術だと思っていたが・・・まさか、お前までもが、絡んでいたなんて」

「いつの間に、風蘭を・・・」

瑠璃光の潜在意識を知っている紫鳳の声は、震えていた。

「目的が一致しただけだよ。この体を、目的の為に使うだけ。みんな、うまく、目的を果たせるではないか」

風蘭は、紗々姫の腕を押さえ込み、ゆっくりと紗々姫の顔を覗き込んだ。

「私に、瑠璃光を渡しなさい。もっと、早くそうすればよかった」

紗々姫の体を、押さえ込み、人質にすべく、寝台の上に引き摺り込む。目は、赤く輝き、体の背後からは、いく筋もの、蛟の精が湧き上がっていた。

「早く渡さねば、この女の」

風蘭が、紗々姫の腕から、手を滑らせ、首を絞めようとした時に、紗々姫は、笑った。

「愚かな」

紗々姫の髪は伸び、風蘭の首に絡みつく。紗々姫の要望は、もはや、人間ではなく、恐ろしく長い、白い蛇と化していた。

風蘭は、成徳の傀儡となっていたが、彼らが望むのは、瑠璃光だった。

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