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5話 国王陛下 その1

「よく来てくれた二人とも。特に挨拶などは不要だ、楽にしてくれて構わないぞ」


「は、はい……畏まりました、国王陛下」


「こちらにお座りいただけますか?」



 国王陛下の部屋に入るなり、いきなり話しかけて来たのは、ジルカド国王陛下自身だ。非公式の場だからか、挨拶は不要と言われた。まあ、そちらの方が楽ではあるけれど、親衛隊によるガードは流石に厳重だ。


 私達は親衛隊の人達から、座るソファを指定された。私とセシル様は扉に近いソファに座り、その対面にはジルカド国王陛下がいらっしゃる。



「父上、用件などについては既にご存知かと思われます。こちらに居る、ネフィラ嬢とスタイン・ハルベルト公爵令息との婚約破棄。また、スタイン・ハルベルト公爵令息とマーシオ・フォルブース公爵令嬢との婚約……父上はどのように考えていらっしゃいますか?」


「うむ……その件についてか」


「はい」



 ジルカド国王陛下は温厚な顔つきと統率力で有名なお方だ。国民からの信頼も厚い。今更ではあるけれど、私とスタイン様の婚約破棄が承認されたのも不可解ではある。ジルカド国王陛下がそれを許したというのだろうか……?


 婚約破棄の話はトントン拍子に進んで行ったとお父様が言っていたから、そういうことになるのだろうけれど。



「ネフィラ嬢」


「は、はい! 国王陛下!」


「まずは其方とスタイン・ハルベルトとの婚約破棄についてだが……あれを承認したのは、其方の為でもあった」


「私の為……で、ございますか?」



 ジルカド国王陛下から意外な言葉が出て来た。私の為ということは……。



「其方自身は記憶が薄いかもしれないが、セシルと一緒に遊んでいた頃のことは、私はよく覚えている。こういうのもなんだが、娘にも近い感情を抱いていたよ」


「国王陛下……それは、本当に光栄でございます」



 そうか……セシル様と私は幼馴染で一緒に遊んでいたこともある関係だ。あの時、ジルカド国王陛下は陰ながら見守っていてくれたのね。一気に国王陛下との距離感が縮まったのを感じた。


「……」


 無言の親衛隊の皆さんは相変わらず怖いけれど……。


「ネフィラ嬢、親衛隊については気にしないでくれ。彼らは自らの職務を全うしているだけだからな」


「はい……畏まりました」



 確かにその通りね。無言の圧力があり、頼もしいレベルでないと護衛なんて務まらないでしょうし。王太子であるセシル様が例えば国王陛下を殴りに行った場合でも、問答無用で倒されるのでしょうね。そう考えると、護衛面での親衛隊の権限は相当に大きいと言えた。


「つまり父上、婚約破棄を了承したのは、ネフィラ嬢を安全にする為ということですね?」


「まあ、そういうことになるな」


「その件については納得致しました。ネフィラを助けていただいて、ありがとうございます」


「ふふ、気にするな」


 なんだか微笑ましい雰囲気を感じてしまった。私も家族の一員になれているような感覚もある。ああ、お父様……ごめんなさい! 私は王家の人間だったようです……なんちゃって。


「しかし、両公爵家の婚約については……どのようにお考えなのでしょうか?」


「両公爵家の婚約か」


「はい、父上」



 微笑ましい雰囲気から一転という程ではないけれど、話題が本題へと移り、雰囲気も変わった。


「北と南の大地を管轄する公爵家同士の結び付きは確かにマズイ。しかし、無下に断った場合、後々裏切りの兆しや貴族同士の団結に繋がるのではないか、という指摘もあってな。少し考えているところなのだ」


 真正面から無慈悲に断るのは、今後のことを考えるとあんまり良くないってことなのかな? 私にはあまり理解できないけれど。公爵家同士が結び付く方が危険だと思うのは、早計なのかしら?


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