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3話 スタインとマーシオの婚約話 その1

 スタイン・ハルベルト公爵令息視点……。



 私はマーシオを私室に呼んでいた。世間話をする予定だったのだが、彼女から切り出されたのは婚約に関してのことだった。


「ねえ、スタイン。私との婚約は本当に大丈夫なのでしょうね? 後になってトラブルが舞い込んでくるのは困るわよ」


「心配はいらないさ、マーシオ。公爵家である私達の婚約を止められる者など居ないさ」



 私は公爵令息、マーシオも公爵令嬢という立場だ。それぞれの家がクリンジ王国の北と南の大地を掌握していると言っても過言ではない。国王陛下であるジルカド・クリンジ様でも、私達の言葉を無下には出来ないだろう。



「最終的には国王陛下の賛成や議会での承認も必要なのでしょう? そちらは大丈夫なのかしら?」


「マーシオ、君は一体、何を心配しているのだ?」


「いえ……貴方は私と一緒になる為に、ネフィラ嬢と別れたでしょう……?」


「ああ、真実の愛に目覚めたからね。幼馴染である君との関係の方が大切だと気付いたのさ」


「それは嬉しいことだわ、ありがとう。でも、ネフィラ嬢が黙っているとは考えにくいのだけれど……婚約破棄をしたのは事実なのだし、しっかりと謝罪をしていた方が禍根が残らないかもしれないわよ?」


「謝罪……? 私がネフィラ相手に……?」



 マーシオの言っていることはおそらく正論なのだろう。禍根を残さない方が良いのは間違いないのだろうが、私が彼女に謝罪することなどあり得ない。プライドが許さなかったからだ。でなければ、あそこまで強引に婚約破棄などしないからな。


 ネフィラへのプライド……というより、下位の者に対するプライドだろうか。


「それはあり得ないな、マーシオ。私が侯爵令嬢でしかないネフィラに謝罪するなど……」


「でも、スタイン……」


「まあ、ネフィラだって公爵家に逆らう馬鹿な真似はしないはずさ。下手をすれば、自分の家が没落してしまうかもしれないんだからね。それよりもまず、私達の婚約が上手くいくことを考えようじゃないか」


「え、ええ……わかったわ」



 心残りがあるようだったけれど、一応は納得してくれたようだ。さて、後回しにしても問題のないネフィラのことよりも、まずは目の前のことに集中しなくてはな。国王陛下が私とマーシオの婚約を認めてくれるかどうか、というところだが。


「国王陛下は私達の婚約を認めてくれるかしら? 噂では、王家は公爵家同士の繋がりが強くなるのを、避けたいと聞いているけれど」


「ああ、それは確かにそうかもね」


 公爵家に限らず、貴族同士の繋がりが強くなりすぎるのをクリンジ王家は嫌っているはずだ。それは私も聞いたことがある。


「でも、大丈夫だよマーシオ。いかにクリンジ国王陛下といえども、北と南の国境線を含めた地域を管轄している私達に、強く言うことは出来ないさ。それは婚約についても同じだろう」


「だと良いのだけれど……」



 マーシオは最後まで不安があるようだったけど、それは彼女の悪い癖というやつだろう。私とマーシオのバックにはそれぞれの父親……つまりは公爵だって付いているのだ。何も心配することはない。


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