27話 セシルとネフィラ その2
「セシル様……その言葉、嘘はありませんよね?」
「当たり前だろう? 王太子が嘘を吐いたらそれこそ大変じゃないか。大問題になる」
「ふふ、そうでしたね」
いきなりの婚約の話……それはとても甘美な言葉だった。正直に言ってしまえば彼とは幼馴染だし、大好きである。彼と一緒になることは私が幸せになることへの大前提と言えるのかもしれない。
「婚約のお申し出、本当にありがとうございます。とても嬉しいです」
「よかったよ、それなら……」
「でも……今はお断りさせて貰ってもよろしいでしょうか?」
私は首を上下ではなく左右に振っていた。
「……理由を聞かせてもらっても良いかな?」
「はい、理由は幾つかあるのですが。まず私が王太子妃としてやっていけるかどうかと言うことです。セシル様と一緒になりたい気持ちはありますが、私自身がその王太子妃教育を受けてセシル様の右腕として活躍できる保証が、今はありません」
「なるほど……それで?」
「はい、ですので時間を頂けないでしょうか? 私もこれから貴族として見聞を広める努力を致しますので、セシル様と一緒になっても誰もが納得するようになるまで……」
私からの申し出。なかなか勇気のいる言葉ではあった。少し上から目線に聞こえなかったかとか、その辺りが気になってしまう。
「ふむ、そういうことか。よく分かったよ、ネフィラ」
「セシル様! ありがとうございます!!」
私は嬉しくてついつい頭を下げていた。
「しかし……それでは時間を要する。こういうのはどうだろうか?」
「? どういう意味でしょうか?」
「私とネフィラの婚約を早めて、結婚までの期間を延ばせば良い。過去の王家にもあったことだ」
「ええっ!? それってつまり……」
婚約期間の延長ということ? そうとしか考えられないけれど……。
「例えばの話だが、王太子妃教育の時間を2倍にすれば良いのだ。特例の処置ではあるが……まあ、前例がないわけではないから可能だろう」
「なるほど、そういうことでしたら……」
私が王太子妃としてやっていけるかの十分な時間が、婚約期間中に与えられることになる。これでは、私がセシル様の告白を断る理由がなくなってしまった。いえ、最初から断るつもりはなかったけれどね。
うわ~~~なんだか急に、恥ずかしくなってきたわ……。顔が真っ赤になっていくのを感じる。
「この状況でもう一度聞くがネフィラ……私の婚約話を受けてくれるかい?」
「セシル様……はい、喜んでお受けさせていただきます」
「ありがとう、とても嬉しいよ」
セシル様は跪き、私の手の甲にキスをしてくれる。王太子殿下になんてことをさせているのだろうか……。
でも、とても嬉しかった。私の幸せな未来への第一歩が始まったような気がしていたから。




