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19話 マグレフ公国を呼び出す舞踏会 その2

「セシル様……あの……」


「どうかしたのか、ネフィラ? 大丈夫か?」


「はい、その……緊張いたします」



 私達は現在、リードフ・ハルベルト公爵の屋敷内……舞踏会会場の前に立っていた。この屋敷に入るのもずいぶんと久しぶりに感じる。ハルベルト公爵家に婚約破棄されてから、立ち寄っていないわけだからね。



「緊張するのは仕方がないだろう。スタイン・ハルベルト殿とは、以前まで婚約関係にあったのだからな」


「そうですね。私としては完全に吹っ切れているつもりですが、緊張はやはりしてしまいます」



 出来れば会いたい人物ではない……そんな思いが私の中で強くなり、緊張に繋がっているのかもしれないわね。



「まあ、今回に関しても私が付いているし心配はしないで大丈夫だろう」


「あ、はい。セシル様とご一緒なのは、とても安心しております」


「ありがとう、ネフィラ。それから、今回の目的はまた別になるからな。肩の力を抜いて臨めば良いと思うぞ」


「わかりました……」



 まあ確かに、今回の舞踏会出席の目的はスタイン様との婚約に関係することではない。広義の意味では関係しているけれど、メインではないというところかしらね。


 問題となっているのは、リードフ・ハルベルト公爵様の方だ。北のマグレフ公国のトップである、セルゲイ・マグレフ公爵を呼び出して、一体、何を考えているのか。議会に通した書類には、我が国とマグレフ公国の親交を深める為の足掛かりになれば良い、という内容のことが書かれていたらしいけれど。


「足掛かりになれば良い」という部分が実に曖昧で都合の良い響きだ。正式に呼び出し、二国間の親交を深めるのであれば、宮殿内の舞踏会に招待するのが普通だし、足掛かりという意味合いで国境付近の公爵家に呼び出しているので、秘密裏な会話もしやすいと踏んでいるのではないだろうか。


 この辺りはセシル様やジルカド国王陛下が懸念しているところでもある。私も考えるだけで、頭の中が混乱しそうだった。ハルベルト家はそこまで大それたことを考えているとは、思っていないけれど……。



「とにかく途中参加にはなるが、入ってみようか。準備はいいかい? ネフィラ」


「はい。大丈夫です、セシル様。参りましょうか」


「よし。それでは行こうか」



 私達は並びながら、周囲の護衛と共に舞踏会会場の扉を開けた──。


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