6 【第14話 完】
「この子が私達のリーダーです」
ファミレスの二人がけソファーの真ん中に座る少女、ホリーチェ・世来は胸を張り、その両サイドに座るスイホウとニイは申し訳ない顔をしていた。
その対面に座る採用面接中のシンウは
「この…方がリーダー?」
と、中学生くらいの女の子を見ていった。
スイホウとニイの説明はこうだった。
この少女は天才だと。今まで見た中でもっとも才能と実力を持った人間だと。様々なパーティーを渡り歩いた二人だったが、この少女と出会って決めた。彼女の才能を中心としたパーティーを作ろう。彼女の才能を十全に活かせるパーティーを作って、彼女と共に上を目指そうと。
「だから、実際に面接に着てくれたのは、シンウさんだけなの」
ニイが残念な事実を言った。
「どいつも白魔道士が子供だと、侮ってきやがる」
スイホウが憤る。シンウは募集要項を思い出してみたが、白魔道士が子供とは書いてなかったと記憶している。新たに書き直して募集し直したのか。
「まあ仕方あるまい。信頼こそがパーティーの命綱だ。子供がリーダーというだけで信頼の担保の価値が下がる、という意見も正しい」
中央に座る子供は大人のような口ぶりだ。いや、声色は子供だがその言葉使いは大人そのものだ。
「それでいうと、私はもうキミを迎え入れることを決めています、シンウさん」
少女は正しく面接官のようなセリフを吐いた。
「え?どのへんが?」
思わずシンウも聞き返した。採用の、決め手を。
「姉弟というところだ。肉親関係というのは信頼の担保としてでかい。お互いがお互いに深い借りがある関係。それは、いざという時にパーティーを守る防波堤になってくれる、と私は思っている」
「信頼の担保、パーティーを守る防波堤…」
少女の言葉をシンウはそのまま繰り返した。
「どうだろうか?君たち姉妹のジョブは我々の不足を補うし、君たちとしてもしばらくは安定した場所で技能を磨けると思うが」
二人の大人を差し置いて、少女は活発なリクルート活動を行う。
ほんの少し、シンウは悩んだが、答えは出た。答えにいたった理由は、少し変でシンプルだった。
目の前の、彼女たち三人の座りが良かった。
そこはいい場所に見えたから、加わりたいと思った。
「あの!こちらからもお願いしましす」
了解とともに差し出した手を、三人が握ってくれた。
スイホウ「うわ、マジかよ。マジで全部録ってあるじゃん」
ニイ「自分の声恥ずかし~。言ってることもアオいわ~~」
シンウ「そうですね。これは厳しいですね」
夜のファミレス。あれから時間は…
二年経っている。
現在。現時刻は、夜の九時。
同ファミレス同座席。
同人物配置…ではなく、あの日いなかったジンクが姉の隣りにいた。
「だからあの日、ねーちゃんに言ったんですよ。俺が行けないから心配だから隠した携帯で全部録音しとけって。そうすりゃパワハラ面接くらった時にギルドに文句言えるって」
弟は自慢げに言ったがスイホウ・ニイのコンビにボロクソにけなされた。「スケベ、ヘンタイ、録音マニア、人間不信者、逆パワハラ」等々ひどい言われようだったが、
スイホウ「暇だから全部聞いてみよう」
と言い出したため、全員で聞くこととなった。さすがに店内でスピーカー再生はできないので、パーティーの共有フォルダーに録音データを突っ込んで、各人がイヤフォンで同時再生を開始し、シンウ、スイホウ、ニイの三名だけが過去の自分と対面して阿鼻叫喚の様となった。
「面接を行わんとする者は、己も面接されるを肝に銘じよ、という教訓だな」
全部聞いたホリーチェが楽しげに言った。二年前から成長はしているがまだ大人という容姿には達していない。
二年前の再生音源を聞いた三人は青い顔をしてそれぞれテーブルに突っ伏している。
ジンクは偶然古いフォルダーから見つけたこの録音データで、女先輩二人が頭を抱えているのを見て素直に楽しんでいるが、姉に対しては深く思うところがあったようで、からかうことはしていない。
「やっぱり正解でしたね」
顔を上げたシンウがホリーチェに言った。
「なにが?」
「あの日の選択ですよ。私はいい選択をしたってことです。それを今日、確認できました」
喜びを素直に表すシンウに少し面食らったホリーチェだったが、手に持ったコップを見つめながら。
「そうかもな。そういう答え合わせも、していいのかものな」
彼女にしては珍しく、その言葉は殊勝なものであった。
そんなホリーチェを優しく見つめるスイホウとニイ。突然ニイが
「あの救助隊員って尾地じゃね?」
と言った。
「違いますよ、中年でメガネだけど、ヒゲ、ヒゲ」
シンウは自分のアゴに両手でヒゲのジェスチャーをした。
「いや、ヒゲとか、生えるでしょ、あの男でも」
スイホウがシンウの謎のヒゲ推しに突っ込む。
「でもこんな、モジャモジャでしたよ。二年じゃ無理でしょ」
「逆だ逆。二年前にモジャモジャで、今は剃ったの」
「あ、頭!頭見ればすぐ尾地でしょ」
ニイがひらめいたが
「あ~~っと…ニット帽かぶってました」
シンウの記憶が否定した。
「な~んだ、シンウの恋の源泉がその劇的救出劇にあると思ったのに。ハゲてないか~」
ニイがひどいことをいってため息を付いた。
「だから~私は別に助けたられたから好きになるとか、そういう王子様待ってる系じゃないって言ってるじゃないですか…」
シンウはだらけながら反論する。
「じゃあさ、シンウは自分がパートナーに求めているものってあるの?公的に発表できるもので」
ストローでジュースを飲みながらホリーチェが聞いてきた。
「公的って…」
シンウはしばし悩み、
「私が大切だと思っていることを、一緒に大切だと思ってくれる人…」
素直に言ってみた。
四人の囃し声が店中に響いた。
聴取終わり?
まあそういう事。今日はけっこういい仕事したってこと。じゃあ帰っていい?
オツカレ!お互いに。
あ、指田さんお疲れです。上がりですか?
……
数字、ああ、出たんですか。
残り…五名…
……
メモリー補給頼みます。ハイ。
…え?ああ、もう一回潜ります。まだ五人残ってるみたいなんで。
ア~~まあ時間的に難しいと思いますけどね。
ホラ、今日の私「ついてる」から。
大丈夫ですよ。ちゃちゃっと手早く手短に見つけてきますから。
ふ~~中年には酷な仕事だな~。
ついてる奴が頑張んないとね。見つけてやらないと。
じゃあ、ええ大丈夫です。それじゃ。
行ってきます。
<録音終了>




