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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十四話 お付き合いのはじまり
89/103

1 【第14話 開始】

挿絵(By みてみん)


 二年前




 立川駅そばのファミレス。


 水内スイホウと三隅ニイの二人は四人席の片側のソファに並んで座っていた。二人共にラフな私服姿。ニイもスイホウも現在の姿からはやや幼く、尖った印象だ。二十歳をようやく過ぎ、冒険者としての稼業も板についてきた。その自負心が尖りとなって現れていた。




 どこか遠くから…画面の外から声が聞こえる。


 スイホウ「尖ってるか?」


 ニイ「いや、私は違うけど、スイホウは尖ってたと思うよ。というかイキってた」


 スイホウ「イキっては…いないと思うけど。まあ若かったし」


 シンウ「イキってましたね。私、第一印象は怖かったし」


 スイホウ「そんな変わらんて、髪が短いくらいだし…服は…まあ当時の流行っていうか…二年前の私…尖ってる?」




 二人が座る席横の窓の外を一人の少女が駆けていった。昼頃に降ったにわか雨に濡れた道を急いで駆ける。


 十八歳のシンウだった。


 紺色のジャケットとスカート、就活生のような姿で走り、そのままファミレスに駆け込んできた。入店のチャイム音が店に響く。


 シンウは乱れた髪を直しながら店内を見渡す。手を上げて合図をしているイキった二人の美人が目に入った。


 二人のもとに駆け寄ったシンウは頭を下げ


 「遅れてすみません!山宮シンウです!」


 遅刻のお詫びをした。


 「いや、遅刻ってだいたい三時頃って話だったし。まだ三時三分だし」


 日頃から冒険者というルーズな時間感覚で生きてきたスイホウは、一般的社会感覚、一般的時間感覚のシンウの態度にやや驚いていた。遅刻を詫びるという人種に驚いていた。


 「だいじょぶだよ、そんな生真面目な会合ってわけじゃないんだし。座ってシンウさん」


 ニイはシンウの堅い態度を和らげようとした。


 「ハイ!失礼します」


 シンウは就活生のような堅い態度のまま、向かいのソファーに腰を掛け、二人に進められてメニューからミルクティーを注文した。




 ミルクティーを一口飲みようやく人心地ついたシンウ。ニイの前には食べ終わったホットケーキの皿があり、スイホウの前には食べかけのサンドイッチがあった。それ以外には書類もなく、携帯がテーブルの上に置かれていて、その画面には、自分の履歴書らしきものが写っているのが見えた。


 それを見て、この会見の本題を思い出しミルクティーをテーブルに戻して姿勢を正した。




 「山宮シンウ。十八です。マッパーを二年やってます」


 シンウが真面目な面接モードに入ったのを見た二人も居住まいを正した。


 「あっと、え~っと、今日は来てくれてありがとう。うちらのパーティーのメンバー募集のなかでめぼしい人の…今日はその、人となりっつ~の?そういうのを見させてもらいたいなと」


 スイホウはこういう社会人的行為というのをほとんどしたことがなかったため、その言葉使いはたどたどしかった。




 スイホウ「これくらいが普通だって。そんなガチガチに偉そうな態度する必要もないだろ」


 ニイ「スイホウに任せて大丈夫だと思ってたんだけど、こん時はだめだなって思ったよ」


 スイホウ「いや、大人のマネ事みたいなことしたくないし。仲間募集してんだから、仲間と接するような態度でって思ってたら、意外と言葉がでなくて」


 ニイ「今まで面接される側の人生だったからね。面接する側って、それまでなかったもんね」


 スイホウ「シンウはこん時どう思ってたの?」


 シンウ「いや、大人だな~~って」


 スイホウ「ほら!騙せてたじゃん!私が正しかった!」


 ニイ「子供騙せて喜ぶなよ」




 「女性だけのパーティーというのが、第一の志望理由です!それとパーティーの平均レベルも私達に合っていて、より高いレベルへと成長できるという期待もあります!」


 就活生モードのシンウが、型通りの志望動機理由を語った。


 「ガッコウ出てから即冒険者で、マッパー二年…と」


 スイホウは携帯に写した履歴書を読みながら確認した。携帯をスクロールさせると、もう一人の履歴書が画面に現れる。


 「あ、今日は弟が来れなくてすみません!こんな日に風邪引かなくてもいいのに、アイツ…」


 シンウは弟が面談に来れなかったことを申し訳無さ全開で謝罪した。


 「いや、イーヨ、大丈夫!姉弟なんてさ、片方見ればわかるもんよ」


 落ち込むシンウに対して、ニイが気休めの言葉をかける。


 「そうなの?わたしわかんないけど」


 スイホウが空気を読めずに隣のニイに体を寄せて尋ねる。ニイは彼女の肩をガシガシ叩きながら


 「そ・う・い・う・もんなの!」


 大人役をちゃんとしろと、言声に出さずにに伝えようとしたが


 「姉がしっかりしてると、弟がバカとか。弟がしっかりしてるように見える場合は姉がルーズだとか…」


 スイホウにはそれが伝わらなかったようで、自分が出会った姉弟関係者の記憶を掘り出しては、そのまま口に出した。


 「あ、うちの、弟…愚弟…、…ジンクは戦士やってて、まだまだ未熟者ですが、、その…元気いっぱいです!」


 シンクが今日の面談に来れなかった弟のプロモーションに失敗した。


 「…元気、イイネ」


 ぎこちなく答えたニイにも、事前に考えていた流れがあった。それは当然、理想的面談の流れであり、大人としての立ち振舞であった。ニイも当然それができると思っていたが、実体験はつねに想像を裏切るものであった。




 ニイ「もっと大人っぽいと思ってたけど、私もダメだなーと思ったよ。雇われる側って気楽だったんだなーって思ったし、雇う側ってほんとに気を使うね」


 スイホウ「わかんないって!雇ったことないんだから。今までずっと、向こうが募集してるからそこにホイホイついてっただけの人生だったし」


 シンウ「私、このころはまだ新人時代って感じでしたから。だから、すっごい焦ってました。風邪ひく?こんな大切な日に、ジンク~」




 お定まりのバイト面接のようなやり取りを交わしていると、場の空気は少しずつ和んでいった。というよりもスイホウが崩れ始め、それにともない場の空気もとろけ始めた。


 「ねぇねぇ、こういう場だと、どういう風にアピールするのがベストだと思う?」


 スイホウは面接管としての心構えがグズグズになり、同じ受験者目線でシンウに質問してきた。


 「そんなこと聞くな!シンウちゃん困っちゃうでしょ!」


 呆れ顔のニイもすでに真面目な面接は自分たちには無理だと諦めかけている。


 「えっと、とりあえずハキハキ?あとは誠実さを出すって感じじゃないですか」


 シンウも就職浪人の先輩の相手をする後輩といった感じだ。


 「だよねー。とりあえず実働に問題ないってアピールしときゃいいよね。能力なんて書面以外じゃ現場で見せるしか無いし。雇う側からしたら、どんなのでもマトモっぽかったら採用!って感じでやるしか無いよね」


 スイホウはニイに話を振った。


 「能力は、ギルドのレベル認定を信用するしかないか…実際ほとんどすべての場合で信用できるから…。見るとしたら人格?マトモってのがまあたしかに基準だね。ダンジョンで命預ける相手だからね」


 「その点、シンウちゃんはマトモだね。ちゃんとスーツ着て面接くるし」


 スイホウがそう言ってシンウに顔を近づける。同性であってもドキリとする綺麗なその顔にシンウが戸惑う。


 「あ、これ。スーツっぽいの一着しかなくて。着てきました」


 「いいと思うよ。冒険者もヤクザな商売みたいに言われがちだけど、立派な社会人、職業人だからね。常識?タイセツ」


 ニイも顔を近づけてきて、シンウの目を見てくる。初心な少女には耐えられない二人の熱い圧力。思わず目をそらした。


 


 シンウ「お二人とも、たまにこういうのやりますよね…」


 ニイ「なにが?」


 スイホウ「どんな?」


 シンウ「天然か…」 



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