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同日 別場所 ラーメン「龍亭麺」店内
「で、ホリーチェが自分の手を切ってね。血まみれになったのを見せてから自分の白魔法で治したの 「私を雇え」ってね。すごい子いるな~って」
ニイの思い出話にスイホウが続ける。
「私ら二人、前のパーティー辞めてどうしよっかなーって時だったから。面白いから仲間にしたの。可愛かったし」
「この二人がパーティーと喧嘩別れするところを見てたから、後をつけたって訳。作戦がうまく行ってよかったよ。成功するまで何回でも切る予定だったからな。自分が白魔道士だって証明するのは大変なんだ。今より子供だったしな」
二人に挟まれた小さなホリーチェが、自分の歴史をシンウとジンクに話して聞かせた。酒に酔ったニイとスイホウの鉄板話に付き合ったのだ。
「じゃあ~その後で私達とあったんだ」
結局、酒に付き合っているシンウ。テーブルの上からラーメンは消え、餃子とつまみとジョッキが並んでいる。
「一年ちょいくらいでか? 姉弟パーティーって珍しいし、血縁ってのは信用の担保としては大きいからね」
そう言ってスイホウが何杯目かのビールを飲む。
「ヘヘ、信用だって」
酔ったシンウが隣の弟を押す。
「ねーちゃん、あんま飲むなよ。運ぶの俺なんだから」
「で」
ニイ、スイホウの二人とも姿勢を正し
「どうなったの?そっちの方は?」
二人がシンウに訪ねた。
「え?だから、言ったじゃん。延期だって。尾地さんが体が動かないから」
シンウが食べていた箸を止めて、少し照れて答える。
「まあ、体が動かないと不自由だからね~」
「いざって時に役に立たないっていうの?」
「子供が食事中だぞー」
下品なニイとスイホウに、餃子を箸でぶっ刺して食べようとしているホリーチェが注意した。
「でもまー、人の好みは好き好きって言うけど、ほんと多様すぎて驚いたわ。あの尾地だからね」
ニイがそう言うと
「ですから、私と尾地さんはその前段階です。あの人と会って話して、そこからどういうルートに行くかを決定するための飲み会なんです。恋と友情の分岐点の前なんです」
シンウはニイの言を訂正して自説を述べた。
「ファザのコンってやつなのか。あの男に父性を感じるってのも相当だぞ」
「違います」
スイホウの発言はシンウに即座に否定された。
「別にあの人のこと父親とか見てませんし。その、もっと真摯に、男と女として…いや、この言い方も…」
シンウは自分で言って自分で照れた。
「あの、俺の前でねーちゃんのそういう話はちょっと…」
ジンクが身内として話に入ってきたが
「バカか、お前のことでもあるんだぞ。お前の家族になるかもしれない人間について、我々は真剣に案じておるんだぞ」
スイホウはおしぼりをジンクに投げつけた。
「え?俺の家族になるんですか?尾地さんが?お義父さんに?」
「違うわ、ボケー!」
ニイのおしぼりも投げられた。
「お義兄さんだ!試しに言ってごらん、私のことをお義兄さんって」
スイホウが無駄に色気を出してジンクの方に迫ると
「お…お義姉さん…」
「そっちもあり得るけど、違うわー!」
ホリーチェのおしぼりが奪われて投げられた。
ジンクは丁寧に三人におしぼりを返した。
「まー好きにやってみなよ、自分の人生なんだから、好きに生きてみたら」
ホリーチェが一番大人のような事を言った。
だが、彼女の周りは酢醤油が飛び散り、食べ方は子供だった。