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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十三話 同じ昼、同じ夜、違う人生
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挿絵(By みてみん)



 同日 別場所 ラーメン「龍亭麺」店内


 


 「で、ホリーチェが自分の手を切ってね。血まみれになったのを見せてから自分の白魔法で治したの 「私を雇え」ってね。すごい子いるな~って」


 ニイの思い出話にスイホウが続ける。


 「私ら二人、前のパーティー辞めてどうしよっかなーって時だったから。面白いから仲間にしたの。可愛かったし」


 「この二人がパーティーと喧嘩別れするところを見てたから、後をつけたって訳。作戦がうまく行ってよかったよ。成功するまで何回でも切る予定だったからな。自分が白魔道士だって証明するのは大変なんだ。今より子供だったしな」


 二人に挟まれた小さなホリーチェが、自分の歴史をシンウとジンクに話して聞かせた。酒に酔ったニイとスイホウの鉄板話に付き合ったのだ。


 「じゃあ~その後で私達とあったんだ」


 結局、酒に付き合っているシンウ。テーブルの上からラーメンは消え、餃子とつまみとジョッキが並んでいる。


 「一年ちょいくらいでか? 姉弟パーティーって珍しいし、血縁ってのは信用の担保としては大きいからね」


 そう言ってスイホウが何杯目かのビールを飲む。


 「ヘヘ、信用だって」


 酔ったシンウが隣の弟を押す。


 「ねーちゃん、あんま飲むなよ。運ぶの俺なんだから」




 「で」


 ニイ、スイホウの二人とも姿勢を正し


 「どうなったの?そっちの方は?」


 二人がシンウに訪ねた。


 「え?だから、言ったじゃん。延期だって。尾地さんが体が動かないから」


 シンウが食べていた箸を止めて、少し照れて答える。


 「まあ、体が動かないと不自由だからね~」


 「いざって時に役に立たないっていうの?」


 「子供が食事中だぞー」


 下品なニイとスイホウに、餃子を箸でぶっ刺して食べようとしているホリーチェが注意した。


 「でもまー、人の好みは好き好きって言うけど、ほんと多様すぎて驚いたわ。あの尾地だからね」


 ニイがそう言うと


 「ですから、私と尾地さんはその前段階です。あの人と会って話して、そこからどういうルートに行くかを決定するための飲み会なんです。恋と友情の分岐点の前なんです」


 シンウはニイの言を訂正して自説を述べた。


 「ファザのコンってやつなのか。あの男に父性を感じるってのも相当だぞ」


 「違います」


 スイホウの発言はシンウに即座に否定された。


 「別にあの人のこと父親とか見てませんし。その、もっと真摯に、男と女として…いや、この言い方も…」


 シンウは自分で言って自分で照れた。


 「あの、俺の前でねーちゃんのそういう話はちょっと…」


 ジンクが身内として話に入ってきたが


 「バカか、お前のことでもあるんだぞ。お前の家族になるかもしれない人間について、我々は真剣に案じておるんだぞ」


 スイホウはおしぼりをジンクに投げつけた。


 「え?俺の家族になるんですか?尾地さんが?お義父さんに?」


 「違うわ、ボケー!」


 ニイのおしぼりも投げられた。


 「お義兄さんだ!試しに言ってごらん、私のことをお義兄さんって」


 スイホウが無駄に色気を出してジンクの方に迫ると


 「お…お義姉さん…」


 「そっちもあり得るけど、違うわー!」 


 ホリーチェのおしぼりが奪われて投げられた。


 ジンクは丁寧に三人におしぼりを返した。




 「まー好きにやってみなよ、自分の人生なんだから、好きに生きてみたら」


 ホリーチェが一番大人のような事を言った。


 だが、彼女の周りは酢醤油が飛び散り、食べ方は子供だった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話まで一気に読ませていただきました。めちゃくちゃ面白いです。ホリーチェの今後が不安……。おじさん頑張って……。
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