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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十三話 同じ昼、同じ夜、違う人生
84/103

1 【第13話 開始】

挿絵(By みてみん)


 夕方、ダンジョンから引き上げてきた冒険者達が、駅のエントランスでそれぞれの成果を誇り、労をねぎらい合う時間帯。


 その人混みの中にホリーチェたち一行もいた。


 駅に併設されたギルドの自動収集機に並んでいるジンク。彼の手には2リットルサイズのメモリー保管瓶がある。今日の仕事の成果の全て、獲得してきたメモリーの黄色い液体が詰まっている。


 順番が来て、その容器を駅の券売機のような機械の横についた穴に差し込む。


 瓶の中に溜まっていた黄色いメモリーが、シュボっと吸い取られて消えた。


 モニターに収集されたメモリーの総量が表示され、その下に換金額が出る。


 「一・五リットル=十五万」


 承認ボタンと非承認のボタンが現れて換金するかを尋ねている。ジンクはためらいなく承認ボタンを押してから、自分の手首の端末をモニターに近づける。チャイム音と共に換金された額が電子通貨で振り込まれた。


 ジンクは待っていた仲間のもとに戻ると、端末を操作して全員に分け前を分配する。


 収入は十五万であるのだが、ギルドへの支払いがで一割引かれて十三万五千に。さらにそこからパーティー全体の経費が引かれて利益は十一万となる。


 それを五等分する。


 一人頭、二万二千円。


 戦闘時のリスクを最小に抑えた「仕事」としての冒険の稼ぎだ。




 「じゃ、飯にすっかー」


 ホリーチェがそう言うと、皆が一斉に食べたいもの上げていったが、


 「ラーメンでいっかー」


 というホリーチェの一言で決定した。


 近場に馴染みの店があるからだ。




 ラーメン「龍麺亭」


 店内に入る五人。彼女たちは駅で装備をすべて外して来ているので私服姿だ。鎧と武器を一つの袋につめて、肩に担いで店に入ってきた五人は、さながら部活帰りの剣道部の学生のようだった。


 奥の空いたテーブルに座ると。それぞれ


 「半ラーメン、半チャーハン、半ギョーザ」


 「ビール、豚骨、チャーシューのせて」


 「しょうゆ、うずら、ネギのせて、あと私もビール」


 「なんにしよっかな…ジンク、何にするの」


 「いや、俺はなにって…じゃチャーシュー麺とチャーハン。あと餃子も」


 「じゃあ、餃子は分けてもらうから…普通のラーメンと味玉ください」


 「飲まないの?シンウは」


 「あ、私、酔うと帰るの大変だから」  


 一通り注文が終わり、雑談が始まった。




 「で、結局どうなったんですか?」


 まだ詳細を聞いていなかったシンウが尋ねた。


 「私と尾地と、あと保安局の二人の存在は消されてて、”合同チームが討伐”ってことになってたね」


 ホリーチェがラー油の瓶で遊びながら答える。ニイがそれを取り上げ、ラー油で汚れた手を拭いてあげた。


 先日のスキュミラ討伐は、その戦果の大きさに対して報道は小さかった。なにより渋谷駅の被害が甚大だったからだ。


 スキュミラに殺された二〇〇名の内三〇名以上が復活できず、近年の死傷事件としては最大の死者数となった。さらに渋谷駅の再建はしばらくの間は無理と判断され、山手線は渋谷を通過駅とすることで再開することとなった。


 ダンジョン口も渋谷駅は当面立入禁止にされ、それ以外のダンジョン口は即日開放された。


 その討伐の記事も冒険者の間では小さな話題とはなったが世間的には関心が薄い。


 そのため、その討伐に参加したメンバーの詳細に興味を持つ者は少なかった。


 参加したはずの尾地、ホリーチェ、ザンゾオ、メイビの名前は載っていないが、それに気づくのはごく少数の身内だけだった。


 「あいかわらず尾地は、世間に顔が出るのが嫌いだな。病気だな、あの中年」


 スイホウが先に来たビールに口をつけた後に言った。


 「まあ今回は私の存在が表に出ない事が重要だったからな。尾地のヤツが参加したメンバー全員に口止めさせてたし。守備隊のゴイくんは私の活躍を全く知らないし。証拠も消してきた。戦闘ログすら消去したんだぞ。戦闘中に壊れましたーって」


 「なんか、大変だったみたいですね」


 シンウが心配そうに言うと


 「すべては…私が天才過ぎたってことだな」


 ホリーチェが鼻高々に自慢した。


 メンバー一同、いつもの天狗が出たと呆れ顔だ。


 「ああ、あと、尾地はいい仕事をしたぞ。私が使い切った一五〇〇万円分のメモリーの代金を政府に払わせた」


 事故現場からホリーチェがくすねた一五〇〇万円相当のメモリー。


 彼女が一戦闘ですべて使い切ってしまったメモリー。


 「見たかったなー、1500万円の魔法」


 ニイが隣のホリーチェの頭に頬をこすりながら言う。


 「想像つかないっすね、そんな量のメモリー使った魔法なんて、ダンジョンワンフロアが全部燃えちゃうくらいかな~」


 ジンクが想像する。


 「なんていうの? 神の技?それくらい凄いのよ、ワ・タ・シ・は」


 ホリーチェがまたしても自慢する。その言葉を素直に信じて驚くジンクとシンク姉弟。


 「おまちどーっした!」


 店員が次々と料理を運んできた。



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