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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十話 目白駅 「おじさん、大量の若者たちと共闘する」
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 このエリアは地上の時間に合わせて天井の光量が増減する。随分と便利に出来ているダンジョンだ。


 今はジャークトパス討伐に入って、三度めの深夜帯である。ついに待機は四日目に突入した。


 青く薄暗い夜の駐車場空間に点々と明かりが見える。両パーティーのメンバーが見張っている位置だ。夜間は危険が増すために、両パーティーともにお互いを監視しあって安全を確保するようになっている。




 そんな中、シンウがいる場所に近づいてくる明かりがあった。


 「尾地さん、こんばんわ」


 尾地は、夜間に近づいてきた中年に警戒をしなかったシンウに、心のなかで感謝した。


 「食料は?」


 「大丈夫です。でも、今日一日ダメだったら考えるってホリーチェが」


 「余分があるから、こっちから回せるってセイカさんが言ってるけど?」


 「流石に、それは…ちゃんと準備してきた方が勝つべきですから」


 尾地は明かりに映るシンウの顔を見て、それがパーティーの総意なのだろうと納得した。


 「でさ、うちのリーダーの、セイカさんがね。シンウさんと会いたいって言ってるんだけど、どう?」


 「え……その、彼女がそういうなら」


 薄暗いダンジョンに気まずい空気が流れ、尾地も察した。


 「あの、嫌ならいいよ。僕が無難に断るから(できるかな?)」


 「嫌じゃないです。ただどんな顔して会えばいいかって、何年も口を聞いてないし。ずっと凄いあの子とは、住んでるセカイ違うってずっと思ってて、私なんかが…」


 「プッ」


 尾地は吹いてしまった。


 「え?なに笑ってるんですか」


 さすがにシンウも怒る。


 「いや、ゴメン、セイカさんと同じこと言ってて。お互い会いたいのに、会えない会えないって困ってるのって。ゴメン、僕は部外者だから笑っちゃうよ」


 「笑うな!」


 「ああ、ゴメンゴメン、でも自分の悩みが常に他人にとっても重大事ってわけでもないんだよ」 


 「ひど!」


 「会っちゃえ!お互いまだ好きなんだから会え。そうすりゃ終わる話」


 「う~…」


 シンウが恨みのこもった目で尾地を見る。だが尾地はそれをニヤけた目で見返す。青く暗い世界で、小さな明かりが照らす空間の中で、お互い目だけを見つめ合った。




 「じゃあこれが終わったら、僕が場所を用意するから二人はそこに集合ね。二人っきりじゃなきゃいいんでしょ?」


 「尾地さんがいてくれるなら…セイカの方は?」


 「彼女が僕に手伝えって言ってきたんですよ。これ言ったらダメだと思うけど、あの子面倒くさいですよ」


 その言葉に今度はシンウが吹き出す。


 「セイカ、小さい頃からそうなんですよ。自分の好きな子が誰かに取られそうになると、すっごく面倒くさいんです」


 そう言ってクスクスと笑う。




 「セイカとは小さい頃から一緒で。一緒に冒険者にって…コレは言いましたね。その後、中学も終わり頃からかな、なんか疎遠になって…すぐ戻れるって思ってたのに。気づいたらお互い冒険者になったのに、別のパーティーで別々で…仕方ないのかなって思ってた。もう別なんだって」


 「三年くらいの疎遠なら障害にならないよ。十年超えるとアウトだけど」


 尾地は実地の体験を述べた。


 「え?チョットまずい、三年越えてる…」


 「お若い人よ、三年程度はって言ったの。大丈夫だから、これ以上、中年に手間かけさせないでね」


 「フフ、わかりました…あー楽しみ。尾地さんと飲み会ですね」


 「いや、セイカさんとの親睦会ね」


 「両方楽しみです」


 「だったら今すぐセイカに会ってくれ」とは言えない尾地であった。


 その後しばらく、どこで飲むかという話で盛り上がった。


 未だ、ジャークトパスは現れなかった。



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