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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十話 目白駅 「おじさん、大量の若者たちと共闘する」
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 「尾地~~、お前なにしてんの~?」


 「おじ、あなた、お知り合いなの?」


 ホリーチェとセイカ、二人のパーティーリーダーに同時に質問され、どちらへの回答を優先すべきか尾地は少しだけ迷ったが、


 「セイカ…?」


 その迷いの一瞬を突くように、もう一人の質問者が現れた。


 対戦相手側のパーティーメンバーであるシンウが驚いた顔でセイカを見ている。


 「シンウ…」


 セイカも彼女を見て驚いている。


 「お二人はお知り合い?」


 とりあえず自分への質問を棚上げにした尾地が質問した。


 「あっ…と…お、幼馴染…」


 尾地の質問にシンウが答えたが、それは実に弱々しく、幼馴染という強い間柄にあるはずのセイカへの遠慮があった。


 尾地がセイカの顔を覗くと、その表情は険しく、とても友人と再会した人物の顔ではない。


 「あの…それじゃ、後で」


 その気配を察してか、シンウはすぐにこの場から去ってしまった。


 なんらかのおかしな気配を感じている尾地とホリーチェ。セイカは止まったままだ。


 「じゃ、討伐バッティングの件について話そっか?」


 ホリーチェが提案した。




 ホルーチェ側の陣、二脚しかない折りたたみ椅子に座るセイカとホリーチェ。豪華なセイカ側と比べると質素と言うしか無い陣地だ。尾地は姿を消している。


 「じゃあ、公式ルール通り。まあ明文化されたルールなんてないんだけど、冒険者同士の掟通りに、先着ルールってことで」


 ホリーチェが提案するのは、通常通りの取り決めだ。セイカも当然のこととして答える。


 「了解です。どちらが取っても恨みっこなし。ダメージルールは?」


 「ダメージは‥有りでいっか?パーティーメンバーが攻撃を受けたら、それも占有権と認める。口だけダメージはなしね」


 「当然ですわ」


 モンスターのそばで攻撃を食らったと叫ぶ詐欺行為だが、モンスターがポップすれば当然、全員から注目される状態なので、あまり通じる手ではない。


 「まさか、センシンセイカとモンスターを取り合いになるとは思わなかった。狙ってるパーティーがいるとは思ってたけど。こんな有名人とは」


 「御冗談を、有名といえば今はそちらが上でしょ。上野駅獲りパーティーで名うてのホリーチェさん…」


 「ところでシンウとは…」


 ホリーチェは自分のメンバーとの関係性をセイカに聞いてみようかと思ったが、その言葉が出た時のセイカの眉の動きを見て、発言を急カーブさせた。


 「あ、…あの尾地、どう?」


 「オジ?あのオジサン?単なる使いっぱしりの派遣冒険者ですわ。まあ、他の中年よりかは気が利いて話しやすくて便利ですけど」


 思わぬことを聞かれて、セイカも変な調子になり、思わず本音をこぼす。


 「それよりも、ホリーチェさんこそ、あの中年をご存知なんですの?」


 「ああ~~~、まあ、チョコチョコ一緒に仕事したっていうか~」


 ホリーチェは少し誤魔化しながら


 「あいつも戦うの?」


 と尾地の参戦の可能性を確認した。


 「あの?おじさんが?単なる荷物係です。戦力になんて数えていませんわ」


 とセイカが答えたので、ホリーチェは心のなかでガッツポーズをした。相手の戦力ダウンは願ったりだ。それが巨大であるほど…。




 ホリーチェたちの陣から少し離れたところにシンウは立っていた。いつモンスターがポップするかわからない。全てのメンバーが見張りに立っている。


 近づいてくる足音にビクリと驚いたが、近づいてくる人物が馴染みの中年であったので安心した顔になった。


 「まさか尾地さんがいるなんて」


 「派遣ですから、雇われたらどこだって行きますよ」


 薄明るい灰色の空間。その丘の上に立ち二人は話す。


 「セイカ…さんとは、子供の頃一緒だったんです。幼馴染って言うと彼女が怒るかもしれないけど、そういう友達だったんです」


 シンウが少し寂しそうに話す。尾地は黙って聞いている。


 「小さい頃、冒険者になるなら一緒になろうって、言ってたんですけどね。気づいたら別々のパーティーになっちゃって。小さい頃の約束だから、別に守る必要もないんですけど、なんかその、なんでかなって」


 「どちらが約束を破ったんですか?」


 尾地が無神経に聞いてみた。


 シンウはしばらく迷った後


 「両方かな」


 と答えた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] >ホリーチェは心のなかでガッツポーズをした うん、確かにガッツポーズ。私(ホリーチェ)の方がオジーを理解しとるんやぞっれ話ですかね。  おっさんの視点からすると、そういう話で終わって…
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