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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十五話 立川アドヴェンチャーズスクール
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8 【第15話 完】



 半年後、卒業の日が来た。


 冒険者免許は普段の教室で順番に手渡しされた。体育館での終業式もない。


 この学校は免許交付のためのカリキュラムのためのものであり、情緒教育を含む義務教育の学校ではないということだ。


 尾地は、彼の青春時代にはあった社会の余裕というものが失われてしまったのだな、という哀愁を強く感じていた。


 それでも子供たちはそこかしこで免許を見せあい、写真を撮って、涙を見せていた。


 尾地は自分の手元にある冒険者免許を見た。


 中年の冴えない顔写真がついていた。それを撮影したときは、周囲にこの子供たちがいたためか、その表情は普段よりも柔らかなものだった。


 「随分苦労したな」


 これを手に入れて、ユコカを購入して、ダンジョンに戻る。懐かしい仕事場に。


 そのためだけの半年間だったはずだ。


 心にふと寂しさがよぎる。


 大きく鼻をすすり。大人としての体面を保った。


 周囲を見回し、子供たちの姿を見てから、もう一度免許を見る。


 「どっちの価値が大きかったのやら」




 「オジィィィィババババ~」


 キリカはほとんど全員と涙の別れをしたあとでようやく尾地にたどり着き、涙ながらに意味不明の言葉を発した。


 「お世話になりました」


 イインチョウは最後まで礼儀を忘れなかった。


 「二人共、元気でね」


 学校を離れれば、もうこの子たちと会うこともないだろう。大きなレベルの差が、同じ仕事場での再会を難しくする。


 「尾地、さん」


 和栗くんとその友達の男子連中が尾地の前に並ぶ。


 お礼参りか?と古いことを考えた尾地であったが、和栗は手を差し出し、握手を求めてきた。


 「お互いこれで免許持ち。同じ同業者ってわけだから、よろしくな」


 和栗は練習で傷だらけになった手を振る。


 それを尾地は


 「いつか一緒に仕事しよう」


 無理と思いながらも希望を込めて握った。


 


 「それじゃあみなさん、お元気で」


 荷物を持って教室を後にしようとした尾地を全員が引き止めた。


 「なにいってんだよ!これから卒業飲み会に決まってるだろ!」


 「なに逃げようとしてるのオジィ~」


 「もう店の予約入れてるんですから」


 「いや、その私、これから冒険者ギルドいってユコカ買おうって…」


 「そんなのいつでもできんだろ!オラいくぞお前ら~!」


 教室中の子供たちが吠えた。


 尾地は忘れていた。若者はどんな時代であっても若者なのだ。






 「あれから二年たった」




 和栗くんは今でも元気に冒険者をやっているようだ。


 キリカさんとは先日、変な形で再会した。


 イインチョウは、冒険者は早々に辞め、ギルドに再就職して今は情報処理を担当しているようだ。




 「そして私は、いまだに冒険者をやっている」


 「かろうじてだけどね」



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