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国母セルア  作者: 小松しま
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 ルスズ副元帥は、師に代わって指導した弟弟子にて事実上の教え子でもあるモルティスを高く評価しているのである。

 自らの片腕云々でなく、大いなる期待を抱いていた。

 このあたりもまた、ルスズ副元帥の傑物ぶりが伺えるところだろう。

 彼のように「自らの足るを知り」、その上で他者の才能……自らを上回るそれ……を正当に評価できる人物は、そういるものでない。

 まして、あまりにも若すぎる「青二才」に対してとあっては、難しいどころでなかった。

 ともあれ、短期決戦を望むのなら、モルティス副元帥の告げる選択肢が、最上となるだろう。

 だが、それでは相応の被害を避けられない。

 双方いずれもだ。

「戦端を開けば、否応なしに、民に犠牲が出ます……。当然、我がイブリール軍とて、無傷では済みますまい」

 これまでセルアは、かなう限り自軍に犠牲を出さないよう尽力して来た。

 巧みな用兵の甲斐あって、これほどの戦闘において既存の常識を打ち破る被害で治まっている事実がある。

 かなうならば、終戦まで貫きたい姿勢だった。

 そのためには、やはりまた奇策を用いるしかない。

「現状を打破するために、ティアモラの最高権力者を動かそうと思います」

「何とっ」

「では……バルモア三世陛下を、担ぎ出すと?」

 セルアにとって、紛れもない実父だ。

 敵の王とは言え、今となっては何の力も持たない形ばかりの存在と承知しているため、幕僚たちが戸惑いの声を上げる。

 ただ、名ばかりであっても王は王。

 正当なる君主ではある。

 エテルティアが何を訴えようが、神と法の認めるティアモラの最高権力者は、バルモア三世に外ならないのだ。

「しかし……どうやって……」

 現在、バルモア三世は、エテルティアの厳しい監視下にある。

 侍女に肌の慰めを求めるような破戒を二度と繰り返さないように、それは徹底した隔離状態だと言う。

「……正攻法では……かないますまいね……」

 セルアは、息で笑った。

 一同は息を呑む。

 国母元帥がこうした表情を見せる時は、要注意であると、誰もがすでに承知していた。


 果たして……。


「これより、わたくし自らが城に乗り込み、父への面会を果たし、降伏勧告をいたします」

「陛下!」

「そのようなっ!」

 あまりにも尋常でない言いようだ。

 確かに娘が父を訪問するのは何らおかしな行動でないが、事態が事態である。

 しかし、セルアは前言撤回しなかった。

 問答らしいやりとりもなく、あっさりと幕僚たちは説得を諦める。

 彼らの賛成を得られなければ、セルアのこと。

 独断でそれを実行しかねない……否、必ずそうすると理解していたからである。

 まして、間諜の働きによって、住人たちすら知らずに過ごしている王の部屋へ至る秘密の通路の存在までを把握した現状。

 止めるのは無理と言うものだ。

 一同は、やむなく了承し、護衛を伴う旨を条件とした。

 白羽の矢が立ったのは、モルティスである。

 幕僚たちとしては、複数の人員を配したかったのだが、籠城の都への侵入は、いくら伝手があると言っても、最小限の人数にとどめなければ、大事を招きかねない。

 優れた武人である彼ならば、たった一人であっても、相応の働きをするだろうと期待されたのだ。


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