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国母セルア  作者: 小松しま
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「ここで、新たな国王陛下にお出まし頂き、神よりの祝福を希ってはと……」

 民衆は、鋭い感性で、表舞台の人々が把握していない真実を指摘することがままあるものだ。

 無論、虚偽の流説に過ぎない場合も多いので、一概には言えない。

 しかし、その言葉を受けて、列席者の一人が硬直した。

 直後蒼白になり、ぶるぶると震える。

 エテルティアは、見咎めた。

「ホーレスト伯爵。……いかがいたした?」

 現役大臣たる彼は、かつて、バルモア三世の王太子時代に侍従を務めた人間で、細君は今も、女官長の任にある。

 いわば、王宮の秘密に通じた人物なのだ。

「い、いえ……。何でも、ございませぬ……」

 明らかな狼狽に、誰もが眉を寄せた。

 エテルティアの更なる追求を皆が期待したが、彼女はそれ以上何も尋ねず、議事を進行させた。



 無論、打開策など出る由もない。

 かろうじて、エテルティア付きの騎士ラーダが、有効と思われる用兵を提案したものの、戦場で指揮を取り、王宮への伺候がかなわない元帥の名代として出席する上級将軍は、鼻で笑うばかりだった。

 なかなかの献策だが、やはり軍の采配を知らぬ身で立てた机上の空論でしかないと嘲笑う。

 曰く、大勢の見極めができていない。

 士官の経験もないまま、地方を流れていた一介の騎士の限界だと断じられては、彼に反論の術はなかった。



 結局その日の会議は、実りが得られないまま深夜に及び、解散となる。

 その際、エテルティアは、ホーレスト伯爵を内密に私室へ招いた。



「何じゃとっ?」


 そして問い詰め、聞き出した驚愕の報告に、彼女は声を荒げた。

「ま、まさかっ……そのようなっ!」

「い、いえっ。確証は何もっ! ただ、侍女がそのよう、訴えておりまするだけで……っ」

「ま、さか……」

 議事中のホーレスト伯爵に劣らない顔色の悪さで、立ったままのエテルティアは小刻みに震える。

 信じられなかった。

 とても、受け入れられるものではない。

「殿下っ」

 ただ一人、室内に控えるラーダが、力を失ってふらつく身体を支えた。

 エテルティアはそれを振り払い、座椅子に身を投げ出す。

 今日の午後に発覚したそうだが、軟禁状態の国王の身の回りの世話を請け負った侍女の懐妊が明らかになった。

 ……彼女は、それが王の種だと主張している。

 到底、認められるはずなどない。

「……真偽を……確かめねばなるまい……」

 エテルティアは息を凝らし、ようよう告げた。

 もし、ホーレスト伯爵の告げた一切が事実なら、確かに神の教えに背く大罪。

 のみならず、王が密通を行ったと吹聴されては、国の威信は地に落ちる。

 神の加護が失われるのもむしろ当然……と、嘲笑さえ受けるだろう。



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