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サナレーン侯爵一行が国境を越えてしばしもせずに、斥候たちからの報告が届いたそうで、馬車の迎えと合流した。
アレノーワは半死半生の状態となっており、出迎えかたがた控えていた医師の診察では、後数刻、馬上の無理な強行を続けていたら、恐らく生命を落としていただろう……との極限状態だったらしい。
とにもかくにも、ようよう横たえられたアレノーワは、そこから最も近しい街バルバラへ搬送され、その領主の館で治療を受ける運びとなった。
そして、そこへまで、何とセルアが幼い皇子と「かんなぎ」を引き連れ、出迎えに来ていたのである。
無論、腹心の侍女、シノンも一緒にだ。
「ああっ! アレノーワ! 何と、痛ましい!」
意識もなくぐったりと馬車から降ろされた親友を見て、シノンは悲嘆の声を上げる。
「妃殿下」
屋敷の前に立つ主君に、騎乗のサナレーン侯爵が慌てて馬の背から降りて歩み寄る。
馬車に同乗していたファウラも続いた。
大変な勤めを果たしてくれた姉弟を、セルアは心からねぎらう。
だが、彼らの顔は苦渋に満ちていた。
「……もはや開戦は避けられますまい。……我らは、主権を侵したのですから」
口惜しいが、いくら奸計による捏造とは言え、殺人の容疑者を奪取したのは、紛れもない事実である。
利は、ティアモラ側にある。
「大神官さまを弑した相手に、何の正義がありましょう。なれど……わたくし共も、正攻法を用いなかった咎は免れませんわ」
二人の悔恨は大きい。
しかし、彼らが決意しなければ、今ごろアレノーワは、この世の者でなくなっていただろう。
まともな裁判など望む由もなく、公開か非公開かはさておき、早々に犯人として処刑されていたに違いない。
そうすれば、ゼルフィード大神官暗殺の真相もまた、永遠に葬り去られていた。
よって、セルアは二人の判断を評価している。
それを告げれば、彼らは謹み入って一礼した。
その表情に安堵の色が浮かんでいるのは、無理もない。
三人がそうした会話をしている間にも、アレノーワは、医師の指示で、館の奥へと運ばれて行く。
予め許しを得ていたシノンも、後に続いた。
セルアに従う形で控えていた館の主人である領主は、尊い身分の姉弟へ、休息を促す。
セルアも同意して、ようやく一行は場所を移したのだった。




