表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の乙女を奪って下さい ~ 僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い ~  作者: 春原☆アオイ・ポチ太
最終章 アリア ~僕と晴希の愛の軌跡~
89/89

最終話 紡いだ絆と繋いだ想い

 ― 自宅 ―


 病気で余命宣告を受け、半年が経過した頃……

 僕は静かに息を引き取った。


 奇しくもこの日は……

 僕の80回目の誕生日で……

 家族に看取られながら……

 最後の時を迎える事が出来た。


「おじいちゃん、死んじゃ嫌だよ」

「お父さん……うううっ」


 泣いている娘や孫達……


 僕の心臓は止まっていたけど……

 みんなの啜り泣く声だけは……

 何故か鮮明に聞こえていた。


 暫くして、皆が寝静まった頃……

 ふと聞き覚えのある声がした……

 亜紀の声だった。


 亜紀は、僕へ優しく語り掛ける様に……


「アナタ、今までありがとう。私は、もう十分に幸せを貰ったから、今度は……天国で晴希ちゃんを幸せにしてあげて下さい」


 ――亜紀……君がいたから、僕は今日まで生きて来られたんだ。僕も幸せだったよ……今まで、支えてくれてありがとう。


 僕が亜紀に感謝の言葉を述べると……

 辺りから急に音が消えた……


 ただ真っ暗に覆われた世界で……

 漂い続けながら僕は思う……


 ――晴希に……会いたい……


 もう50年以上も前の約束だ……

 忘れられてるかも知れない……


 僕が不安と孤独に……

 押し潰されそうになっていた時だった……


 ビュゥーー

 

 風が吹いた……

 春風の様に暖かな風だった……

 その風は僕の頬を優しく掠めると……


「私との約束、覚えてるかな?」


 ――晴希?


 次の瞬間、世界が光に包まれた……


 体が宙へと浮かび上がると……

 あの頃と同じ姿に戻っていて……

 僕の目の前には……晴希がいた。


 僕は少しホッとした様に……

 優しい眼差しで見つめながら……


「会いたかったよ……晴希」

「うん、私もだよ」


 その太陽の様な笑顔に照されると……

 不思議と笑みが溢れた……

 あの頃と同じ様に……


「ふふふっ……」

「はははっ……」


 僕は満たされていた……

 温かな日溜まりによって……


「もう良いの?」

「ああ……行こうか」


 僕が晴希の手を取ると……

 晴希も優しく握り返してくれた。


 そして、僕達は空に向かって歩き出した。


 勿論、不安が無かった訳じゃないけど……

 晴希と一緒にいると、不思議と恐くは無かった。


 ――天国って、どんな所なんだろう……ん?


 歩みを進める僕達だったが……

 1つだけ気掛かりな事があった。


 横を歩く晴希の顔が……

 どこか儚げで、悲しそうに見えたから……


 ――晴希は、まだ僕の事を好きなんだろうか?


 死の惜別(せきべつ)から58年……

 もしかしたら、僕との想い出も薄れ……

 晴希の愛は色褪せてしまってるのかも知れない。


 そんな不安から、僕は歩みを止めると……

 バツが悪そうに、視線を横へ反らしながら……


「晴希は、まだ僕の事を……」

「愛してるよ」


 ――えっ!?


 真意を確かめる為に問い掛け様とした瞬間……

 言葉を遮る様にして『愛してる』と言った晴希に……

 僕は驚きを隠せず、目を向けると……


 ……晴希は泣いていた。


「でもね。亜紀先生の事を考えると心が痛くて……私、このまま直樹さんと一緒になっても良いのか分からなくて……えっ?」


 気が付くと僕は……

 晴希を抱き締めていた。


「……良いんだ。もう良いんだよ、晴希」


 晴希の優しさが……

 何よりも愛おしかった……


 そんな晴希の事を……

 誰よりも愛していたのだから……


「亜紀も、天国で僕達が結ばれる事をずっと願ってたんだ。だから晴希は……幸せになっても良いんだよ」


「……うん」


 初めは戸惑っていた晴希も……

 その温もりを確かめる様に……

 僕の胸へ頬を擦り寄せると……

 静かに目を閉じた。


 僕は晴希の柔かな髪を撫でながら……

 優しい眼差しで見つめると……


「……もう一度、あの日からやり直そう。あの幸せだった結婚式から……今度は、ずっと一緒だから……」


 僕は誓った……

 今度こそ、晴希を幸せにすると……


 僕は願った……

 この愛が永遠(とわ)に続く様にと……


「結婚式が終わったら、その……今度こそ、私の乙女を奪って下さいね」


「……うん」


 もう二度と離れる事は無いだろう……

 これが僕達の……『真愛(まかなし)の物語』……


「直樹さんは経験者なんですから、ちゃんとエスコートして下さいよ」


「あっ、あれは成り行きだったから……」


 僕達の幸せな日々は、続いてゆく……


 ~ fin ~

ご覧いただき、ありがとうございました。

皆様の温かい応援があったので、最後まで走る事が出来ました。


これからも、真摯に小説活動を続けて参りますので、どうか温かい目で見守っていて下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まさか、こんなことになるだなんて…。を繰り返しながら、その全部を回収し、納得できるような形で収拾をつけられていて凄いと思いました。 初めは草原さんがこの女の子(晴希ちゃん)と結ばれるまでのドタバタな日…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ