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私の乙女を奪って下さい ~ 僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い ~  作者: 春原☆アオイ・ポチ太
第四章 カプリース 〜冬山に舞い散る雪花〜
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58話 オルタネイト

和訳『互い違い』

 ― 自宅 ―


『朝だよぉ!朝だよぉ!!直樹さん起きて下さい』

「晴希……」


 ハルルン人形が元気良く、朝を知らせると僕は優しく頭を撫でた。


 運命の日……

 雲ひとつ無い空……

 透き通る冬の冷たい風……


 氷の様な水で顔を洗うと……

 僕は何かを決意した様に身支度を整えた。



 ― ミカゲマート ―


「遅いわね……アイツ、まさか本当にサボったりしないわよね」


 バイト開始まで残り10分、先に到着していた添田は、中々来ない僕に苛立ちを募らせていた。痺れを切らした添田が僕へ電話しようとした……まさに、その時だった。


 ガシャ


「うぃーす」

「なっ……何でアンタがココに?」


 息を切らせながら現れたのは、なんと夏稀だった。これはいったい、どう言う事だろうか?



 ― 昨晩 ―


「もう、いい加減にしろよ。近所、迷惑になるだろ」


 あまりにも執拗な冨幸に僕は苛立ちを隠せず、勢い良く扉を開けると、そこには……


「あぁん? アンタは、いつから俺にそんなデカい口を叩ける様になったんだ?」


 そこにいたのは冨幸では無く、なんと夏稀だった。僕が怒鳴った事に苛立っていたのか夏稀の目は吊り上がっていた。


「あっ、ごめん。また、冨幸が来たのかと思って……」

「??」


 どうやら、夏稀は晴希の事が心配で訪ねて来たらしい。落ち着きを取り戻した僕達は、今までに起きた事を摺り合わせながら話し合う事にした。


「つまり、晴希が急に計画を中止にしたのはナツのせいって事?」


「そうだ……でも事態は思ってたより、深刻みたいだな」


 何でも以前、晴希は自身の誕生パーティーでお祖父さんに婚約発表を勝手に計画されてしまい、逃げ出した事があるらしい。


 そのパーティーには多数の要人も出席しており、結果として泥で塗れる事になってしまった慶恩寺家は、これに激怒し婚約話も一旦、振り出しに戻ってしまったんだとか……


「つまり、今回は……」


「晴希のお爺さんに取っても、後が無いって事だ。きっと、必死になって妨害してくるぞ」


 僕はゾッとしていた……冨幸だけでは無く、あの晴希のお祖父ちゃんまで僕達を妨害してくると分かったからだ。


「無理に行けとは、言わない。だが……」

「…………」


 そう言うと夏稀は、歯を食いしばりながら俯いた。その目には薄っすらと涙が溜まっている様に見えた。


「もし草原さんが、命を投げ出してでも冨幸の祝賀会に行くと言うなら……ハルの事を救ってやってほしい」


 これは僕に取っても苦渋の選択だった。失敗すれば、命にも関わるかも知れないからだ。


 でも、僕の答えは既に決まっていた……


「大丈夫だよ、ナツ。晴希は僕が守るから……」


 本当は恐かった……

 逃げ出したかった……


 だけど今、晴希を救えるのは自分しかいないと、心を奮い立たせると拳を強く握り締めながら……熱い想いに胸を(たぎ)らせた。


「でっ、作戦は?」

「えっ? いや、それがまだ……」


「はぁああ? こんだけ格好付けといて、

ノープランなのかよ。良いか、まずは……」


 それから夏稀主導で、作戦会議が始まった……そして僕達の会議は、深夜まで続くのだった。


 ・

 ・

 ・

 

「ってな訳で、草原さんの代わりにシフトへ入ったんで宜しくッス……添田さん」


「…………」


 夏稀とのシフトが余程、気に食わなかったのか、下からギラリと睨みを利かせる添田だったが……夏稀は全く動じなかった。


 ――なんでコイツなんかと……まあ良いわ。今日は私が責任者なんだし、扱き使って……


「ねぇ小湊さん。悪いんだけど、そこに置いてあるダンボールを倉庫に……」


「ああ……全然、運んで来てくれて構わないッスよ。自分はレジ番してるんで……」


 ――はぁあああ? 何なのよ、コイツ…… 


 夏稀からの思わぬ反撃に、顔を顰めながら拳を握り締める添田だったが……


「でも、ほらっ力仕事って若い子の仕事じゃない? おばちゃん、腰があんまり良くないし……」


 激しい怒りを飲み込みながらも、大人の対応で何とか言い包めようと、苦笑いをしながら近寄ってくる添田だったが……


「そんな弛んだ腹だから腰痛になるんっすよ。ダイエットの為にも、一人でやって来て下さいね……添田さん」


「………………」


 夏稀の事を激しく睨み付ける添田……ココにもう一つの戦いの火蓋が切って落とされた。



 ― 晴希の家 ―


 ピンポーン……

 ピンポーン……


 夏稀のメモを頼りに、朝早くから晴希の家まで来た僕だったが……そこに晴希の姿は無かった。


 ――スマホも繋がらないし、いったいどこへ?


 冨幸の家へ向かう前に、晴希を何処かへと連れ出すつもりでいたが……どうやら先を越されてしまった様だ。


 僕が付近を捜索していると、晴希の家の前に一台の黒いワゴン車が止まった。


 ガシャ……


 車のハッチバックが開くと、中から出てきたのは……車椅子に乗った、一人のお祖父さんだった。



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