55話 レボリューショナリー
和訳『造反有理』
電話を終えてから数分後、晴希からメールで詳細が送られて来たのだが、その内容を見て僕は驚愕してしまった……その作戦が、あまりにも現実離れしていたからだ。
潜入作戦①
『祝賀品に混じって潜入する』
冨幸の家は恐らく、セキュリティも万全だろう。僕が入れる程、大きな祝賀品なんて逆に怪しまれるし、見つかってしまえば不法侵入者として訴えれるのは間違いないだろう……当然、却下だ。
潜入作戦②
『春日野家の付添として潜入する』
確かに会場に入り込んでしまえば、一番有効な手段かも知れないが、晴希のお祖父さんや使用人の目を掻い潜るのは容易な事では無い……一旦、保留だ。
潜入作戦③
『催し物の参加者として紛れる』
祝賀会では毎年、会場を盛り上げる為に催し物を行っているらしい。年によっても異なるが、歌や喜劇……ビンゴ大会など、実に様々なイベントを行っているらしい。
イベント内容は、直前まで分からない様だが、今までの作戦の中では一番マシな部類だろう。僕は迷いながらも、この作戦を選択する事にした。
― ミカゲマート ―
――えっ? 何だよこれ……
バイトを終え、事務所に入った僕は、来月のシフトを見て驚愕した……なんと、三が日全てに勤務が入っていたからだ。
例年、このスーパーでは、三が日は休業としていたのだが、どうやら店長の意向により変更になったらしい。
――これは、マズいな。
何とか晴希との作戦決行日だけでも休みにして貰おうと店長へ取り合ったのだが……
「私が作ったシフトに、なんか文句あるのかい?」
後ろから現れたのは、なんと添田だった。どこか不機嫌そうな添田は、シフトを見て不満そうな顔をしている僕に食って掛かって来たのだ。
「いやっ、その……1月3日は、用事があって……」
「それが文句だって言うんだよ。3日は私と同じシフトなんだから、勝手に変えられちゃ困るよ」
どうやらこの日は、店長やテンダイが本社へ挨拶へと出向いてしまうらしい。そこで古株の僕達を店長が直々に指名して来た様だが……
「でっ、でも……」
「良い年齢して、ゲームのイベントとかだろ? そんな事の為に私達を巻き込むんじゃないわよ」
馬鹿にした様な顔で、僕を見下す添田だったが……内心は穏やかでは無かった。今まで人に頼りきって来た添田は簡単な仕事しか出来ず、面倒事は全て僕に押し付ける気でいたからだ。
「いや、そんなんじゃ。本当に大事な用事があって……」
「ふん……仕方無いわね、アンタは早番でしょ? 今回は、私から店長に報告しておいてあげるから早く帰んなさいよ」
「あっ……ありがとうございます」
さっきまで激しく罵倒して来た添田だったが、僕の困った顔を見て心変わりしたのか、店長に取り合ってくれる事になった。
意外と良い所もあるのかと、僕は御礼を言うとそのまま帰宅する事にした。
― それから数日後 ―
再びバイトに入った時に確定したシフトを見て、僕は驚愕した……シフトが変更されていなかったからだ。
「店長……これって、どう言う事ですか?」
「ん? 草原君どうしたのかね?」
僕は、三が日が全て出勤になっている事を訴えて、勤務変更を希望していた事を伝えたのだが……店長は何も聞いていない様だった。
「こっ……困りますよ。僕にも用事が……あっ」
僕は言葉に詰まった……この店長が冨幸や晴希のお祖父さんの刺客である可能性があったからだ。計画が露呈してしまえば、何かしら策を講じてくる可能性もあり、これ以上、口に出せずにいると……
「確定した後の変更になるからね。あとは自分で交渉して下さいよ。報告は、事後で構いませんので……」
店長は、あまり快く思っていない様だが、引き下がる訳に行かなかった僕は……この日、ホール中を駆け回った。
「そんな事、急に言われても……私も忙しからさ」
「変わってあげたいけど、里帰りするから……」
「その日って添田さんとだよね。私、あの人とは、ちょっと……」
既に予定が埋まっている人が殆ど……予定が無い者も、添田と二人きりだと分かると激しく拒絶して来た。
「添田さん、酷いじゃないですか。シフトの事、店長に話してくれなかったんですか?」
「あの日は、店長が不在だったのよ。もうシフトは決定したんだし、子供じゃ無いんだから諦めなさい」
高圧的な添田に対して、僕はそれ以上、言い返す事が出来なかった。
― 自宅 ―
――僕は、いったいどうしたら……
「でねっ、冨幸君がマイクを持ったら奪い取って……って、直樹さん聞いてるんですか?」
「あっ……いや……ごめん」
晴希との作戦会議も耳に入らず、ただ呆然としている時間が続いた。
「もう、しっかりして下さいよ。あっ、もうすぐカウントダウン始まりますよ。3・2・1……ハッピーニューイヤー!! 直樹さん、本年も宜しくお願いします」
「あっ、こちらこそ宜しくお願いします」
結局、僕は晴希に事実を告げられないまま新年を迎えてしまった。
運命の日までは、あと二日……
絶望感だけが、僕の心に押し寄せていた。




