序詞 真愛の詩
『真愛』と書いて『まかなし』と読みます。
『切ないほど愛しい』って意味になります。
残春……花弁散る頃に……
透き通る風が頬を掠めると……
微かに鼻を擽る雨の匂い……
シトシトと零れる……
宵時雨の中で……
僕達は出会った。
三十路フリーターと女子高生……
世間から見ればあまりにも……
不釣合な二人だったかも知れない。
結ばれる事など無いと決めつけていた僕は……
好意を抱かれながらも受け入れる事が出来ず……
気付けば彼女を遠避けていた。
そんな気持ちとは裏腹に……
幾えもの偶然が重なった。
離れても引かれ合う様は、まるで赤き糸……
強い運命で結ばれていた僕達は……
いつしか愛を紡いでいた。
春に日溜まる、あの花の様に可憐で……
太陽の様に眩しい笑顔に照された僕の心は……
色鮮やかに映し出されていた。
温かな木漏れ日によって……
優しく包まれた僕の手は……
無償の愛で満たされていた。
そして、誓った……
誰よりも彼女を幸せにすると……
僕は願った……
この愛が永久に続く様にと……
『私の乙女を奪って下さい』
この言葉の真意を知った時……
僕の心は熱くなり……
彼女を想いながら……
ただ強く……抱き締めていた……
これは、僕と晴希の出会いと恋路……
深き絆を綴った真愛の物語である。
第一章は『プレリュード 〜出会いは春風と共に〜』
まずは、二人の出会いからお楽しみ下さい。




