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第3章-9 生まれ変わる意思たち

 云百のVRカプセルを部屋またぎで隈なく探すことを余儀なくされる――予定だった。

「どういうことよ! 何で動かないのよ! このっ! ――いっつぅ!!」

 何故か聞き覚えのある声に二人は引き寄せられる。向かった先には、定期検査でもないのにVRカプセル外に出ており、何故か足の爪先部分を押さえている少女がいた。

「……遠野美咲だな?」

「へっ‼ 誰っ⁉」

 少女は自身の名前を呼ばれ、呼ばれた方向に振り向く。

「えっ? まさかノール⁉」

「俺そんなにわかりやすいか?」

「意外とまんまだぜ?」

 VR内では基本的な外見は変えられない。

 が、髪を染めたり髪型を変えたりは勿論、アイコンタクトで目の色を変えたり、痩せたり、筋肉をつけたりすることによって現実の自分とは別の自分を作り上げることが可能だ。

 その証拠に。

「え? もしかしてハール? マジ?」

「あぁそうだよ。現実じゃあんな鎧着れねえひ弱だよ。髪色だって茶色に染めたことねえし」

 友晴とハールの見た目は全く違っていた。

「まぁミシェルはほとんど変わんねえな。服装が夏使用ってか?」

 典仁が言うように美咲はほとんどミシェルと差が無かった。髪色は日本人特有の黒。髪型もミシェルと同じで肩にかかるくらいで、鎧や職業服などが多いVRローファンタジーで数少ない現代風の服装に近い盗賊を生業にしていた為、ほとんど差異は無かった。

「それよりこれ何とか出来ないの⁉ あたし戻れなくなっちゃったのよ!」

「お前の最後の一言が原因だろ」

 帝都で騒いでいればそこかしこにいるNPCからログが筒抜けだったことに先ほどの典仁の忠告で理解した友晴は、それを美咲にも言い聞かせた。

「おい。それは後にしろ。ずっとNV社の連中が眠ってる訳でもねえし、二人だけだったからまだ何とかなったが大勢来られたら終わりだ。逃げるぞ」

「逃げる? どこへよ?」

「そうだ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

 初耳の美咲は勿論、時間が無いとはぐらされた友晴もそれについては聞く権利があった。何故なら今からそこに向かうことになるからだ。

「それについてはここで言う訳にはいかない。バレたら元も子もない」

 それだけ伝えて、典仁はVR管理施設から出ていく。

「行くしかねえか。俺には、それしか出来ねえもんな」

 でかい物を失った以上、贅沢も権利もへったくれも無いことを改めて理解した友晴の足取りは重く、それに伝播されたのか、美咲の顔色も芳しくは無かった。

 彼らが目的の場所に辿り着いたのは、それから5時間後のことだった。

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