第一章_冒険の2 相棒
2018年12月5日改稿
あれから数十分、力士の四股のような体勢で力んでみたり、念じてみたりといくつか試してきた。
「魔法よ出ろ!!......だめかぁ。こんなときラノベだったら『体の中央に意識を集中させて』とか言っちゃうんだろうなぁ。」
と意識を集中させてみたところ......出来ました。
なんだか、体の中央というか心臓の辺りに暖かいなにかを感じてしまいました。
「できちゃったよ。」
まさかここまでとは思っていなかったので、この数十分を無駄にした気がするが、気を取り直して次の問題へと思考を向ける。
「それで、次は召喚魔法ってどうやって使うんだ?誰か教えてくれないかな。」
ここで、頭の中に情報が流れ込んでくる。
世界辞典さんが教えてくれたようです。
そもそも、魔力の使い方も世界辞典で調べればよかったと、今になって気づいたのでした。
「今まで無かったものだから、慣れるまで使いにくいな。早く使いこなせるようにならないと。」
世界辞典からの情報に従い、魔力に乗せた詠唱を開始する。
「我に従う者よ。我の呼び掛けに応えその姿を示せ。」
なんだか恥ずかしくなってきたところで、俺の正面に魔方陣が現れ眩い光が迸る。
光が収束した中から現れたのは、尾が九本もある狐だった。
(よぉ!ワイは天狐って言われる九尾や!よろしゅうな!)
急に頭の中に直接響くように、話かけてきた天弧と名乗る狐に驚きつつも一言だけ突っ込ませてほしい。
「なんだ!その怪しい関西弁は!」
(なんや言われても、ワイの出身は関西やさかいなぁ。)
「まさかの日本出身!?」
(せやで!なんや昼寝しとったら、目の前に光があってやな、誰かに呼ばれてる気がして入ってみたら、召喚されてもうたわ!せや、心配せんでもトウカのことは、ここに来る前に青髭生やしたなんや気持ち悪い化け物から聞いてきてるから、安心してや!)
青髭を生やした気持ち悪い化け物...なんだか急に寒気がしてきました。主に尻に。
「まぁ、よろしくな!」
(おう、よろしゅうに!せや、天弧言うんは種族のことやさかい、なんか名前でもつけてんか?分かりやすいん頼むわ!)
「分かりやすい名前?そうだなぁ『テン』でどうかな?」
(なんや安直な気もするけど、分かりやすうてええわ!気に入った!ワイは今日からテンや!)
そのあと、テンと相談した結果、一番近くの街を目指すことになった。
テンの話によれば、テンには固有の能力がいくつかあるようで、その中の一つ『千里眼』で遠くの景色まで見通すことが可能らしい。
この能力で、一番近くの町を探したところ、森を抜けた先に大きな街がある。
ただ、その街まで歩いて2、3日はかかるようだ。
せめてもう少し近くにしてほしかったと考えながら、街のある方角へと歩きはじめた。
後ろを歩くテンの顔は綻んでいたが、トウカは気づかない。
やっと従魔を出せました。