靴擦れしたOLと移動販売のお兄ちゃんとの出会い
「…………いたい、もう限界………」
カッ!と踵を鳴らして立ち止まると、ヨロヨロと目の前に停めてあった車の陰に入ってしゃがみ込む。
いつも履いている靴が雨で濡れてしまったので仕方なく慣らし履きもしてない新品のパンプスは容赦なく踵をえぐる。そして、そんな日に限って外回りが多かったりするのだ。
「~~ッッ………はぁ、あと一件なのに……」
立ち上がってそっと靴を脱いでみると、踵に貼っていた絆創膏は無惨な姿になっていた。ついでに靴擦れもかなり酷い。手持ちの絆創膏を貼り付けただけの踵くん。よくもまぁここまで頑張ってくれた。むしろ頑張り過ぎたくらいである。
「頑張れる、私は頑張れる。がんばる。とりあえずその辺で絆創膏買って貼り直して……!!」
「あのー、スミマセン……」
「いけるいける、次まで後一時間!!」
出そうになった、ため息を押し殺して、無理やり自分を鼓舞していると、何だか視線が……
「あ、のっ!!!」
「……?」
突然の大声に辺りを見回すと運転席の窓からにょきっと首が生えて……
「なまくびっ!?」
思わず大声で叫んでしまって周りの注目を集めたのは…かなり恥ずかしかった……
「……ふはっ!!生首、生首って!!」
大笑いする生首男……もとい、伊藤武文と、靴擦れ女こと私、名護ちあきとの出会いはこんな風に始まったのだった。